坂田マルハン美穂のインド生活通信

 
 

前置きが長くなったが、カボチャの話題。

バンガロールのMGロード、利便性の高い場所に、昨年、新しいショッピングモールがオープンした。1 MG ROAD。このモールの店内レイアウトの、恐ろしいまでの悪さ、導線を全く考えていない構造には、訪れるたびに腹立たしささえ覚える。

エスカレーターが各階に止まらず、地上階(日本で言う1階)から、いきなり2階(日本で言う3階)に飛ぶという構造も理解不能。間の階に行くには、階段かエレベーターを使わねばならない。

ドーンと長いエスカレーターは、ガラス張りの壁面を通しての見た目にはクールかもしれないが、それ以外に、いったいどんな意味があるのだろう。きっとなんの意味もないだろう。

インドにはこの手の「不思議構造」による建築物がしばしば見られるが、このモールのそれは格別だ。訪れるたび、「いやだな」と思う。

しかし、最上階の高級スーパーマーケットの、魚売り場がなかなかに便利なので、それが目的で、ときどき足を運ぶ。

なお、このスーパーマーケットで扱われている食材の多くが、海外からの輸入品だ。

「地産地消」の食生活を尊重しているわたしだが、たまに目に留まったものを購入する時もある。

数カ月前、輸入野菜のコーナーを見ていたときに、日本の大根によく似た大きい大根を見つけた。そう。先日デリーの市場で見かけたそれのような。

近寄って、値段を見て驚いた。1キロ1300ルピーとある。すなわち、1キロ2250円。タイからの輸入品らしい。

その近くには、バンガロール産の小ぶりの大根が、1キロ数十円で売られている。似たような味に違いない大根の、格差約100倍。

「誰が買うの? こんな高い大根!!」

あまりの高値に、呆れた。

インドでは、一般に生鮮食料品類は、「1キロ単位」の値段が表示されている。トマトやタマネギ、ジャガイモなど、一般によく使用される野菜類は、1キロ数十円が相場だ。

高価な野菜でも、せいぜい1キロ数百円。輸入物のリンゴなども1キロ300円〜400円で手に入る。

……またしても、更なる前置きが長くなった。

さて、事件は先日、起こった。その日、日本及び米国からのクライアントとひと仕事を終えたあと、ちょっとした買い物をということで、このモールに立ち寄った。

デリーから戻って直後の仕事だったため、家の食料も尽きかけていたことから、クライアントがインド産のオーガニックスパイスなどを購入している隙に、食材を購入することにした。

翌日は、久しぶりのサロン・ド・ミューズ。久しぶりにアップルタルトでも焼こうと、まずはリンゴ売り場へ。近所の果実店なら1キロ180ルピー前後のリンゴが、220ルピー。若干高いが、今日のところは妥協しよう。

さて、野菜……。お、カボチャがある。99ルピーの表示。インド産に比べれば高いが、悪くない。アスパラガスも160ルピーだが、まあ大量に買うわけじゃないし、いいだろう。

会計時、クライアントの買い物も立て替えたため、「なんだか、高いな」と思ったものの、彼らへの対応に気を取られていたこともあり、レシートを確認することもなく、店を出た。

さて、その夜。

カボチャを取り出し、洗うべく値札を剥がそうとして、目を見張った。

え? 1388ルピー?

1388ルピー?!!

え? どういうこと? このカボチャ一個が、約2500円?!

オーマイガー!!! 

高まる鼓動を抑えつつ、アスパラガスを手に取れば……。

672ルピー。約1200円!

ジーザスクライスト!!!

このカボチャとアスパラガスだけで、合計3700円?! 

やられた……。

なんてこった。わたしは一瞬、数字を見誤っていたのかと自分を責めたが、そうではない。単位を見誤っていたのだ。

間違いなく、あの店は、あの一隅の商品だけを、キロ単位ではなく、100グラム単位にしていたのだ。

きっと売れないから、苦肉の策で変更をしたのだろう。それにしたって、リンゴなど、同じ輸入品でも手頃なものはキロ単位で表示しているのにも関わらず、同じ食料品のコーナーで単位を変えるとは……。

姑息すぎるにもほどがある!!

これは最早、金額の問題ではない。たいした額ではないと言えばそうなのだが、絶大な失敗を冒してしまったかのような気分に苛まれたのも事実。悔しい。悔しすぎる。

この件については、後日、折をみて店を再訪し、マネージャーに面会を申し入れ、表示の統一を依頼しようと思う。フェアじゃない。明らかに、間違えて購入することを期待しているとしか思えない。

事実、その後、友人らと話した際に、やはり間違って購入しそうだったところ、キャッシャーのスタッフから「この金額になりますが、これでいいのですか?」と念を押されて気がついた人が数名いた。

スタッフですら、多分、良心が咎めているのである。

激変するインド。落とし穴はこの程度ではない。

高級レストランで故意に高いワインを勧められてうっかり注文したり、あるいは高級ジュエリー店で、クレジットカードでの会計の際、1桁多く入力されたりと、似通った、しかし、より深刻なトラブルは少なくない。

油断大敵。レシートはきちんと確認する習慣を付けようと、改めて思ったのだった。