インド百景。

坂田マルハン美穂のインド生活通信

 
 

【福島の原発と東京オリンピック】

それにしても、気が晴れない。ここ数週間の世間のニュースを目にするにつけ。まずインド。インド経済の落ち込みや、政治の腐敗ぶり、そして来年の選挙へ向けての、なんとも残念な政党の現状。夫もまた、ほとほとインドに嫌気がさし、「米国に帰りたい気分」が再燃している。それでもわたしは、インドに住み続けたいと思っているのだが。

それより何より、我が母国。2011年3月から延々と、なに一つ収束することなく、危機的な状況が続いている福島の原発。関連の情報にアクセスすれば、高濃度の放射能で汚染された水が、今までずっと漏れ続けていたことなど、そしてこれからもそれが続くであろうことも、それ以外にも諸々の危機的な事態が重なっていることも、手に取るようにわかる。日本のメディアが大々的に報道していなくても、小さく、しかし確実に情報を提供している現場の人々の声は、拾い集めることは可能だ。

にもかかわらず、あたかもつい最近、汚染水問題が発生したかのようなトーンのニュースが巷にあふれた。そして国費投入の報道。事故から2年以上もたった今、事態は悪化の一途をたどっているというのに、たかだか470億円で汚染水問題が解決するはずがない。現在の福島の状況を考えれば、全然足りない数字だと、素人のわたしでさえ、察しがつく。

国民一人当たりに換算すれば、400円程度。このような対応しかできない政治家を選んだのは、国民の責任でもある。2年以上、この件について、政府の収束宣言などを鵜呑みに信じる方も愚かだということを自覚すべきだ。血税云々の不満を言っている場合ではない。

一人一人が、1000円でも、いや1万円でも負担して、国を挙げて、解決を目指すべき重大なる事態である。すでに汚染水は、海を介して世界に広がっている。 日本だけの問題ではない。地球そのものに、多大なる影響を与えている恐ろしい事態なのだ。これから5年先、10年先、100年先、いや何千年、何万年たっても、毒を吐きを続ける放射性物質。

今、生きているわたしたちが、全員死んでしまったあと、何度生まれ変わっても、延々と、地球を汚し続けている。なんと恐ろしいものに、人間は頼って生きることになってしまったのか。と、考えればきりがないのでこの件については、これ以上は触れない。

そして極めつけは、東京オリンピックの開催決定。オリンピック誘致に関する盛り上がりを見せた報道。愕然としたのは、安倍首相のことばだ。「福島の状況は、コントロール下にある」という。

そんな嘘が、国際社会で通用してしまうことが恐ろしい。いや、東京での開催が決まったことは、最早日本だけの力ではない。原発を推進している国々の、何らかの思惑が働いているのではないか、とさえ思う。

確かに経済効果はあるだろう。オリンピックに向けて、今まで放置されて来た福島の現状に対し、世界のメディアもより注意を払うことになるだろう。そこで、何か、前向きな方策がとられることを、最早、祈るしかない。

わたしは、以前からも折に触れて書いて来たが、福島の現状に対して、絶望的な気分でいる。しかしながら、日本人として、ただ政治や東電に対する不満だけを口にするのも本意ではなく、自分にできることを模索している。今のところ、福島原発行動隊に、ささやかながら、寄付をさせてもらっている。それが焼け石に水でも、ともかく自分がなにか、関わっているのだという行動を起こさなければ、気持ちのやり場がない。

この話を分かち合える人は、残念ながら、身近にいない。そういうものだということも、理解している。しかし、どんなに疎ましがられても、この件に関しては、わたしは看過するつもりはない。日本人として生涯抱え続けねばならない、大いなる問題であると認識している。

■公益社団法人 福島原発行動隊 (←Click!)

普段、チキンの丸焼きの際には、オリーヴオイルと室温に溶かしたバターを表面に塗るのだが、今回はバターのかわりにギーを使ってみた。と、表面がいつもよりもまんべんなくこんがりと焼け、野菜の風味も濃厚さが引き立ったように感じた。今後はギーを使うべし。

ちなみにアルミホイルの中には、オリーヴオイルを加えて蒸し焼かれたガーリックが入っている。これを潰しつつ、肉や野菜に添えて食べると旨いのだ。

カレーも豚肉の煮込みも、いつもよりもおいしく感じられた。

そんな次第で、ミューズ・リンクスのセミナーも、いい感じで軌道に乗り始めたな、という気がする。

今回はガネーシャ祭りで連休だったこともあり、参加したいができなかった方々が多くいらっしゃった。今回のセミナーは、入門編と並んで、今後も何度か繰り返し行いたいと思う。食は命。健康第一。

なにがあっても、強く在るために、まずはしっかり、食べるべし。

【今週金曜日は、ミューズ・チャリティバザール!】

出張で1週はおやすみとなったサロン・ド・ミューズだが、6日金曜日は、再開した。(※上の写真は、先月撮影)

このごろは新メンバーも次々と来訪され、50名に達しようとしている。メンバー同士が顔と名前を覚えるために写真入りの名簿を作っているのだが、それらの入れ替わりも多く、しかし、多くの方々が楽しく活動されている様子は、本当にうれしい。

9月13日金曜日には、拙宅でのバザールを実施。10を超えるヴェンダーが集い、賑やかなものになりそうだ。ただ心配なのは空模様。今年のバンガロールはとても雨が多く、恒常的に水不足故、それは恵みの雨ではあるのだが、快晴が続くはずのこの時期、特に夜の雨が激しい。

せめてバザールの日は降らないで欲しいと願う。

誕生日を迎える友人は、そもそも夫の仕事の関係者ではあるが、米メディア大手のインドオフィスでマネージングディレクターを務める妻とは、別のルートでわたし自身が知り合った友人でもある。

狭いバンガロールの元NRI社会では、顔見知りが多い。参加者が皆、以前ニューヨークやシカゴ、ベイエリアなど米国に暮らしていたこともあり、話の共通項が多い。

滅多に会うことがないにも関わらず、話題が通じ合うのが興味深い。この日は美味なワインに酔いつつも、社会貢献や食の安全、環境問題についても話題に上る。

友人の一人がフィランソロピーの投資家で、彼女の記事が先日のTIMES OF INDIAにも掲載されていた。彼女は、わたしの活動にも共感を示し、バザールについても、強く応援してくれるのがうれしかった。多くを説明せずとも通じ合える相手との会話は、国籍や言語を軽やかに超えるな、と実感する夜でもあった。

【友人の誕生日】

金曜日は、サロン・ド・ミューズのあと、久しぶりにサリーを着て外出。バンガロール東部郊外のホワイトフィールドに住む友人夫妻から、ハズバンドの40歳の誕生日パーティを祝すべく、招かれたのだ。

欧米では、40歳の誕生日を盛大に祝する習慣がある。我が夫が40歳を迎えた昨年は、デリーの義理の両親をはじめファミリーフレンドや友人らを招き、大々的なパーティを開いた。

わたしたちが招かれたパーティ会場は、ホワイトフィールドに1年ほど前にできたというオリエンタル料理店、LIKE THAT ONLY。とても雰囲気のよい店で、料理も美味。わたしたちがインドに移住した当時とは、驚くほどに変化しているこの界隈。

新しいオフィスビルディング、住宅、ショッピングモール、ホテル、レストランが次々にオープンし、不便だった郊外の新興地とは全く異なる様相を呈している。

【ミューズ・リンクス・ライフスタイルセミナー実施】

昨日の日曜日は、ミューズ・リンクスのライフスタイルセミナー第3回を実施した。テーマは、『インドでの食生活と健康管理』。当初はパワーポイントでのプレゼンテーションのみにとどめるつもりだったが、やはり調理実習は不可欠だろうと判断。キッチンに入って動きが取れる人数を考慮し、定員を10名とした。

ちょうど男女比5名ずつ、いい感じの構成である。

最初の2時間弱は、お茶休憩を挟みつつ、濃厚なレクチャー。インドでの健康管理にまつわる実践的な情報を、今回はハンドアウトの資料もカラープリントにしてお渡しした。資料作りに気合いを入れすぎて、まるで一冊のガイドブック状態。体裁を変えて販売したいくらいだ。

とはいえ、実際に説明をしながらの方が断然、理解が速やかとなるので、セミナーへの参加は非常に有意義である。

資料には、インドの食材で簡単にできるヘルシーでおいしい料理の数々を写真入りで紹介。単身赴任の男性や、独身者が、いかに手早く簡単に調理できるかを配慮した素材選び、調理法などを伝える。

調理実習では、ダイナミックな料理の中から、我が家の定番で人気のある料理のいくつかを作ることにした。

参加者一同、エプロンを着用し、手を洗い、キッチンへ入る。なんだか楽しい。ちなみにこの日のティータイムのおやつは、人気のカスタードクリーム入りフルーツタルトレット。フルーツと生クリームは、各自でトッピングしてもらった。自分で手を加えると、食べ物に対しても愛着が沸き、不思議とおいしさが増すものである。

ミューズ・クリエイションのクッキングクラス同様、キッチンに入ると、あれもこれも伝えたいと、ついつい熱血してしまう。熱血しすぎないように、自分をコントロールしながら、インド食材の扱い方(切り方、洗い方、火の通し方)などを伝授することから説明する。

なにしろ、日本と同じ食材でも、こちらのものは形が悪かったり、虫が食っていたり、泥がついていたりとワイルドなものも多い。特にオーガニック野菜に関しては。しかし、自然に近いそれらの野菜は、味わいも濃厚で栄養価も高い。火の通りが遅いことなどにも配慮した上で、いかに素材の味を生かした料理を作るかを熱く語る。

楽しかったのはチャパティ作り。大半の人が初挑戦ということもあり、まるで粘土遊び。水とATTA(無精製の全粒小麦粉)を混ぜて捏ねるだけで生地ができるということに驚く一同。

生地を作り、しばらく寝かせるまでは簡単だが、丸く平べったく伸すことは、慣れるまでは難しい。すさまじい形状の、見るからにまずそうなチャパティを焼く人もある。

形は悪くても、最後に直火に当てての「膨らまし」に成功し、得意げな参加者もあり。焼きたてを、そのまま味見する人あり、ギー(精製バター)を垂らして味見する人あり、ともあれ素朴で健康的な味わいを堪能である。ちなみにATTAは精製された小麦粉MAIDAよりも栄養価が高く、繊維も多い。お通じにも非常によい主食だ。

仕上がり時間を考慮して、まずは鶏の丸ごとグリルの下準備。これをオーヴンにいれたあと、今度は、我が家の定番、北インド家庭料理風のチキンカレーの作り方を伝授。

丸ごとチキンの解体をデモンストレーション。鶏の部位などを説明しつつ、皆さん興味津々だ。そしてセミナーで説明したスパイスについて、その使い方を実践。鍋底にたっぷりのギー(他のオイルでもよし)を入れ、クローブやカルダモン、シナモン、キュミンシードを加えて香り立たせる。

その後、玉ねぎ、ショウガ、ニンニク、各種スパイス、トマトをおろししたものなどを加え煮込み、最後に鶏肉を加えてぐつぐつと更に煮込む。インドの家庭で使われる調理器具などを駆使し、なるたけ本場のやり方を実践すると同時に、電動ブレンダーなども使いつつの調理だ。

その他、山ほどの白菜やネギ、ダイコンと豚バラ肉による人気の和風料理など、我が家の創作料理なども伝授。合間に、鍋でのご飯の炊き方(簡単すぎる)や、ヨーグルトで作るクリームチーズ風おつまみなども作るうちにも、オーヴンのチキンがほどよく焼け、チキンカレーもいい塩梅で仕上がった。

料理はダイニングルームに運び、ビールで乾杯。そして試食会というよりは、もはやパーティ状態の豪華な食卓となったのだった。