インド百景。

坂田マルハン美穂のインド生活通信

 
 

ドミニカン・シスターズの活動については、過去の記録と重複するが、改めて簡単にここにまとめる。ドミニカン・シスターズは、この界隈のスラムに居住する女性と子どもたちを支援する団体である。

◎託児所の運営:朝の7時半から午後5時まで子どもたちを受け入れ。

◎教育支援:小学校に進む子どもたちの学費などをサポート。

◎学童保育:放課後の子どもたちを受け入れる。塾なども開講。

◎子供国会の運営:詳しくは後述。

◎医療支援:スラムを訪れ、女性たちの定期的な健康診断の実施。

◎家計管理プログラム:セルフヘルプ(自助)・グループを構成し、ファイナンシャルに関する指導を行う。

◎職業支援プログラム:女性たちが経済的な自立を果たせるよう、職業訓練などを行うほか、仕事の斡旋も実施。勤務先がインディラナガール界隈であれば、メイドの斡旋も行う。


★以下、過去の来訪時の記録へのリンクをはっておく。

■ドミニカン・シスターズ。スラムに暮らす子らの託児所へ 7/12/2014

■ミューズ・クリエイション、慈善団体で子供と遊ぶ! 2/9/2013

■貧困層の子供と女性を支援。ドミニカン・シスターズ 3/21/2012

■貧困層の女性を支援。ドミニカン・シスターズを訪問 7/15/2010

ドミニカン・シスターズはバンガロール市内東部の住宅街、インディラナガールの80フィートロード沿いにある。この施設の詳細については、過去に幾度も記しているので、今回は割愛する。関心のある方は、文末に過去の記事へのリンクをはっておくので、ご覧いただければと思う。

さて、朝10時45分に現地集合と決めていたところ、さすが時間を守るジャパニーズ。ほとんどの参加者が時間通りに集まった。初めてお会いする方も少なくなく、用意しておいたネームタグを配布し、簡単な挨拶のあと、持参した大量の「遊び道具」について説明をする。

参加者の大半は、慈善団体訪問が初めてという方々。「折り紙、できません」「ツル? カブト? 折れない」「不器用なんで」という人も少なからずいらしたが、ともあれ、一緒に遊びつつ一緒に学びましょう、というわけで、参加者を「できる人」「苦手な人」という組み合わせでいくつかのグループに分かれてもらい、担当を決めたのだった。

シスター・アンに笑顔で歓迎された我々は、子どもたちの待つ大ホールへ。 シスター・アン曰く、最初は200名を予定していた子どもたちだが、家族で祝祭の儀礼に出かけるなどで来られない子が多く、最終的に80名程度だとのこと。それは、むしろ助かった。結果的には、200人もの子どもたちと遊ぶにはホールは狭く、約80人プラス大人たちで、ちょうどいっぱいいっぱいだったからだ。

さて、最初に子どもたちと挨拶をし、いつものように歌を歌い、子どもたちにも歌を歌ってもらって、互いの距離感を少し縮める。それから、子どもたちを大ざっぱにグループ分けして(なかなかに大変だった)、早速、遊びのはじまりだ。

以下、写真を中心にレポートしたい。(※参加者の承諾を得て掲載)

毎度おなじみの、魚釣り遊び。今回は、いつもの託児所の幼児たちではなく、学校に通う子どもたちが対象だ。日本でいう小学1年生から6年生までが最も多く、数名の中学生が参加しているという状況である。

子どもたちは、実に熱心に、黙々と、魚を釣る。

子供だけでなく、シスターも真剣勝負。大人もそれなりに楽しめる遊びである。どこにでもある廃品が楽しいおもちゃになる好例だ。

わたしは全体をぐるぐると巡回していて、ゆっくり一つの場所に腰を据えていたわけではないのだが、今こうして写真で絵を見ると、子どもたちに、どんな気持ちで描いたのかを、尋ねたくなる。

ミューズ・クリエイションのチーム紙のメンバーが作った指輪をうれしそうに見せる女の子たち。まるで婚約会見状態だ。

あれが欲しい、これも欲しいと欲張る子供がいるかと思えば、あげようと渡しても、遠慮する子供もいる。受け取ったら丁寧にお礼を言う子もいれば、奪い取るように受け取る子もいる。

カラフルな厚紙で作られた海の生き物たち。これは毎度おなじみ「魚釣り遊び」の素材だ。魚はブリとカツオの二種類。ディテールへの拘りが憎い! 魚に金属製のクリップをつけ、磁石を施した釣り竿を作る。

折り紙で作ったコマもたくさん準備されている。新聞紙は正方形に切って、カブトを折るための下準備。ヤクルトの容器は、豆や米などを入れてマラカスにして遊ぶ。

下準備は整っても、人数が少なすぎるのが気になったので、友人知人ほか、ミューズ・リンクスのセミナーに参加してくれたことのある人たちにもメールやFacebookで告知したところ、最終的には15名の参加者が集まった。

実は平日には仕事のある駐在員の方からも、折に触れて「慈善団体を訪問してみたい」との声を聞く機会があった。ゆえに今回は、お声をおかけするのに好機だと思ったが、やはり働く方々も、連休を利用して旅に出かける人が多数。「次回ぜひ」という返事が何通か届いた。

今回のところは残念だったが、土日に慈善団体訪問という企画も立てるべきだとの思いを新たにしたのだった。

担当していた参加者曰く、このトウキョウ少年はよほど釣りが気に入ったらしく、他の遊びには目もくれず、1時間半、ひたすら、釣っていたという。釣り人気質なのね。

毎度おなじみカブトは、折った後に被ることができるという実用性においても、人気の高い遊びである。

スラムに暮らす子どもたちは、インドの色彩感覚が炸裂するかのごとく、普段からも派手なファッションであるが、祝祭日の今日は格段と、華やかな装いだ。水道や電気などの生活インフラストラクチャーも劣悪なスラムに暮らす女性たちは、しかしサリーにせよサルワールカミーズにせよ、華やかにたくさん持っている人が実に多い。子どもたちの衣類の派手さは、母親たちの好みでもあろう。

それにしても、左の女の子の瞳は、思わず見入ってしまうほどの美しさ。まるで細密画から抜け出て来たような顔つきをしているのだった。

こちらはアクティヴにボウリング! ペットボトルの底に少し豆を入れて安定させ、ボウリングのピンに見立てる。テニスボールを転がして遊ぶというもの。これがまた、かなりの盛り上がりを見せた。

なにが感心したかって、施設のお手伝いをしているというお兄さん。年少の子どもたちの面倒を見つつ、ひたすらマシンと化して、ピンを立て直す。1時間以上も黙々と、作業を続けてくれたのだった。

美術専門のアーティストの方も、参加してくださった。あらかじめ画用紙とクレヨン、そしてポスターカラーを準備して絵の好きな子どもたちに指導。この一隅だけは、プロフェッショナルな空気が漂っていた。

まずは、クレヨンで下絵を完成させる。

ポスターカラーを水で溶いたものを、指や布を使って、絵の上に伸ばしていく。子どものころの図画工作の時間を思い出す。

のびのびと自由な世界が画用紙の上に広がる。子どもたちも熱心に、黙々と描き続けている。

折り紙世界もまた、黙々と。女子は女子、男子は男子で自然と集まり、作品作りに取り組んでいる。折り紙ができないと言っていた参加者も、子どもたちと頭を付き合わせて英語の折り紙ブックに見入り、一緒に作品を仕上げているところが微笑ましい。

日本で買って来ていたゴムひもを持参。短く切ったゴムを輪にし、そこにリボンを結びつけてみた。予想通り女子に人気で、次々に作ってとリクエスト有り。高学年の女子にリボン結びを任せつつ、素材を切って渡す。髪飾りにも使えるかわいらしさ。

こちらの女子たちには、画用紙とクレヨンを渡して、「自由に好きな物を描いて」と大ざっぱな指導。大人の人数が足りない故、これは仕方のないことではあったが、彼女たちなりに、定規なども使いつつ、独自の世界を描いていた。

楽しそうだから、よしとした。

近所のスーパーマーケットに売っていた大判の「塗り絵ブック」が役に立った。本を解体して1枚ずつ配り、クレヨンで塗り絵をしてもらう。

こちらも子どもたち、熱中して色塗りに取り組んでいる。

オフィスで働く、やはりスラムに暮らすスタッフの女性たちも、子どもたちに教えたいからと、折り紙の折り方を練習。

今日の活動を記念に残るようにしてほしい、とシスターからリクエストを受けていたので、制作した折り紙の一部を大きな画用紙に貼ってもらうことにした。

終わりの時間が近づいても、熱心に塗り絵を続ける子どもたち。

チーム紙のメンバーがたくさん用意してくれていた折り紙のコマなどを、子どもたちに配る。ちょっと大きな子どもたちも、喜んで受け取ってくれた。

1時間の予定が、瞬く間に時間が過ぎて、結局は1時間半ほど一緒に遊んだのだった。

最後にみんなで片付けをしたあと、最初と同様、子どもたちはきちんと並んで座り、互いに挨拶をし合う。年長の生徒が挨拶をしてくれたのだが(上の写真の、マイクを持っている少女)、非常に的確にてきぱきと言葉を重ね、感謝の言葉を伝えてくれた。

「わたしたちのために、根気強く教えてくれてありがとうございます」と、”patient”という単語を何度も使っていたのが、微笑ましくも大人だなあと感心した。

一方、シスターの最後の挨拶。

「今日は、みな久しぶりに童心に帰って、楽しい一日を過ごせました。本当に感謝します」

という。一瞬、「え? 子どもたちは日々、童心じゃないの?」と思い、あとでシスターに尋ねたところ、子どもたちは毎日勉強勉強で、こんな風に子供らしく遊ぶことは滅多にないのだという。

童心に帰って遊んでいたのは、我々大人だけではなかったのだと思うと、なんだか複雑な気持ちである。子どもたち、どの世界もそれなりにたいへんなのだなあと、思う。

今回、ここを訪問するにあたって、少し心配をしていたのは、子どもたちの集中力の程度であった。たとえば折り紙をしていても、隣の絵画に興味を持ってしまったら途中で投げ出してしまうのではないか。1時間ほども、同じ作業をしていられるのだろうか……といったことだ。

しかしこの点に関しては、杞憂であった。大半の子どもたちが、一旦取りかかった作業に集中して、きちんと作品を仕上げていたからだ。

ひょっとすると、普段このような遊びをしていないがゆえ、塗り絵など少々幼稚な作業であったにしても、高学年の子どもたちが無心になって熱中していたのかもしれない。

このような活動が初めての参加者が多数で、最初は戸惑い気味の方も少なくなかったが、終わるころにはすっかり打ち解けて、大人たちの表情がとても穏やかな笑顔になっていたことが、印象的であった。

無事に終わった……と、心地よい達成感に包まれながら、陽光降り注ぐ長閑な庭を歩く。そしてシスターに誘われて別の建物の中へ。

ここは、教会の本部であると同時に、週に1度各地から訪れる牧師たちのための宿泊施設も備えており、非常に清潔感あふれる快適な空間だ。

その一隅の食堂に通された。シスター・アンほか、他のシスターたち自らが調理してくれたランチをごちそうしてくださるとのことである。とてもありがたい。

食卓には、蒸したジャガイモ、魚のフライ、インゲンのソテー、グリーンリーフのサラダ、キュウリやトマトのスライス、ライス、そして南インドの味噌汁とも言うべくサンバルなどが並んでいる。

前日に「ランチをこちらで用意します」との連絡を受けていた。その際に「辛い味付けは控えた方がいいですよね」と気遣っていただいたので、「辛さ控えめで」とお願いしていたのだった。故に、このようなシンプルな料理を用意してくださったのだと思う。

ちなみにこのレタス(グリーンリーフ)は、庭の菜園で採れたばかりの新鮮なものらしい。あっさりとしたドレッシングがかかっていて、これまたとても、おいしいものだった。

食事をしながら、各自、ちょっとした感想コメントなどを発表しつつ、子どもたちとの時間を振り返ったのだった。

みなが感じていたのは、子どもたちの目の輝きと力強さ、のようである。わたしはインドに来るまでは、子どもたちと遊ぶ機会というのがほとんどなかったこともあり、だから「平均的な子供の瞳の輝き」というものが、どの程度なのかはわからない。

ともあれ、わたしがしばしばインドで出会っている子どもたちの力に満ちた様子はまた、今回の参加者にとっても、非常に印象的であったようだ。今後もこのような場があれば参加したいとの言葉をいただけたのは、わたしにとっても、光栄なことであった。

我々が何かを与え、施しているという立場ではないのだ、こちらが共に過ごすことで、得難い経験を享受しているのだ、ということを、今回もまた改めて痛感した。

今回は、敢えて企画したことではなく、舞い込んで来た話に対応すべく「急遽」な訪問ではあったが、今後はバンガロールで働く人たちにも、この国のローカル社会の一端で普段とは異なる世界を見てもらうべく、このような機会を敢えて作って行こうとの思いを新たにした。

本当に、いい一日だった。


※ミューズ・クリエイションのメンバーが感想を送ってくださったので、以下に転載させていただく。

今回初めての慈善団体訪問で緊張もありましたが、こども達が笑顔で迎えてくれすぐに不安はなくなりました。挨拶から元気いっぱいで、パワーに圧倒されました。

最初、私は魚釣りゲームのところでこども達と遊びました。釣り竿を順番に使ってもらうのが難しかったですが、順番に使ってもらえるよう声をかけ、喧嘩にならずに遊んでもらえて良かったなと思います。途中で女の子に折り紙を作ってほしいと言われ、折り紙を始めたら、たくさんの女の子に囲まれて、ひたすら折り紙を折りました。自分の作った折り紙をすごく喜んでくれてとても嬉しかったです。

周りの様子を見る余裕はなかったのですが、終始こども達の元気な声が響いていて楽しんでもらえて何よりでした。今回はミューズ以外の方にも参加して頂きとても心強く、有難かったです。シスターにはお昼ごはんのおもてなしまでして頂き感謝の気持ちでいっぱいです。