インド百景。
インド百景。
坂田マルハン美穂のインド生活通信
●牛やロバなど大型の使役動物や野良犬を保護するセンターへ
先日、ミューズ・クリエイションのメンバーとともに、バンガロールで最もよく知られている動物保護施設CUPAの施設の一つを訪問した。
CUPA。Compassion Unlimited Plus Action。
限りなき慈悲、そして行動。
CUPAには、ミューズ・クリエイションを結成するかなり前の2009年、チャリティ・ティーパーティで集めた寄付金を携え、訪れたことがあった。当時はまだ、獣医大学の裏手に1カ所の拠点があるだけだったが、現在は、市内に数カ所、目的別の施設がある。
今回は、街の中心部から最も近い場所にある施設、大型動物を保護するセンターを訪れたのだった。以下、CUPAの活動内容(過去の記録と重複する内容あり)及び、訪問時の様子など、記録を残しておきたい。
CUPAは故クリスタル・ロジャーズという英国人女性によって、1991年にバンガロールに創設された。クリスタルは1959年に、首都デリーにおいて見捨てたられた動物たちのための施設である "The Animal Friends" を立ち上げて以来、インドでさまざま動物に関わる活動を展開し、動物愛護の活動家として多くの人々に影響を与えてきたという。
●食用以外の動物の殺処分は禁じられているが、対策が不全
インドでは、食用を除いては「動物を殺してはならない」と法律で定められている。他国のように保健所が野良犬を捕らえて殺処分するなどということはない。しかし、これはきれいごとでは済まされない問題だ。
路傍には人間の管理下におかれていない犬やネコ、役に立たぬと捨て去られた雄牛など、さまざまな動物が日常的に見られる。 当然ながら、この「放置された状態」によって、発生する問題が多々ある。
尤も、割合で考えれば、人間と動物がそれなりに共存しているケースの方が多いのかもしれない。ローカルのコミュニティでは、野良犬をご近所さんたち共同で「飼っている」ようなところも見られるし、路傍で残飯を食べている犬の姿はよく見かける光景の一つだ。
野良犬と人間の距離感が非常に近い光景に、ときにほのぼのとして見入ってしまうこともある。が、その背後にある問題は大きく深い。
その筆頭に挙げられるのは、狂犬病だろう。野良犬が子どもを襲ったというニュースは時折、新聞で見かける。数年前、友人が、突然野良犬に足を噛まれて病院に駆け込んだという出来事もあった。
わたし自身、街の随所で見かける野良犬には、普段から近寄らないようにしているし、歩道や路肩に図太く寝転んでいる彼らを誤って踏んでしまわないよう、気をつけてもいる。
そもそも、政府、州政府ともに、問題が多いインドである。動物どころか、人間の人権、義務教育の問題にさえも目が行き届いていないのだから、動物に対しては何をか言わんや、という放置状態だ。
だからこそ、CUPAのような非営利団体などの存在が、社会にとって重要な役割を果たしているともいえる。
●人間が、動物を傷つける、あるいは虐待、酷使するケースも
自動車の急増によって増えているのは、自動車事故に遭う野良犬だ。市井でも、足が3本しかなかったり、あるいは跛をひいて歩いている犬をしばしば目にする。
ところでインドでは、わたしの知る限りのどの地においても、犬は無防備なほどに、路傍に寝そべっている。人や車の邪魔になるリスクの高い場所に敢えて寝転ぶ、その危機感のない行動が理解できない。
暑いからとか、そういう問題ではなく、涼しい時期のバンガロールですら、そうである。インド犬(たまにネコも)に共通する、あの、危機を回避しようとする本能に欠けた国民性(国犬性)とはいったいなんなのか、知りたいものである。
昼間は寝転び、夜になると活動を開始する野良犬が多数である一方、昼間から猛烈な勢いで、走る車を追いかけて吠えかかってくる犬なども見かける。狂犬病にかかっているのだろうか、びっくりさせられる。
インドではまた、現在でも運搬の手段としてウマや牛、ロバなど使役動物も多い。動物を大切に扱う人もいるのだろうが、そうでない人も多いようで、動物の許容量を超える荷物を運ばせたり、悪路を歩かせて足をくじかせたりするなど、負傷する動物も多い。一旦、負傷した動物は使い物にならないため、放置されるケースも多々あるという。
インドでは神聖視されているはずの牛ですら、負傷している場合も多いという。ちなみに5年前の訪問時には、デリーの牛はゴミの中からプラスチックやビニル袋を誤って食べてしまい、身体に変調を来す牛が多いらしいが、バンガロールでは事故が多いとのことだった。
しかし現在は、バンガロールの牛たちも、ゴミを食して不調となるケースが増えているようである。
動物保護施設CUPAで、救済された動物たちを見学。
17-Apr-2014
記念撮影をしようと集まると、犬たちも次々にやってくる。本当にフレンドリーな犬たちだ。
この日はともかく暑かったこともあり、あまりゆっくりと動物に触れ合う状況ではなかったが、近いうちに、今度は野生動物保護センターを訪れたいと思った。こちらは市街南部の動物園の近くにあり、緑豊かな敷地だとのことだ。
実は今回、ローカルの学校が夏休みの時期であり(バンガロールは今が一番暑い季節)、子供がいる学校関連の施設への訪問が難しかったことから、この施設を選んだのだった。
さもなくば、人間のための施設を優先して訪れることになっていたはずだから、暑かったが、いい機会だったと思う。メンバーのお嬢さんたちが2名、夏休み中につき参加することができたのも、よかった。
以下、いつもの如く、参加したメンバーからの感想を掲載する。またCUPAに関するサイトへのリンクも、末尾に記しておく。
【 感想1】
人間ではなく動物の施設、どんなものかと思っていましたが、とても良い経験をさせていただきました。
犬達は、野生とペットの両面持っているような感じで、正直「かわいい〜♡」という感覚ではありませんでしたが、野生の犬が人間を信用するとこんなに良い表情をするようになるのか、と、驚きました。
私は犬を飼ってはいますが、育ててきた過程で犬の怖さも知ったので、どの犬も全部好きということはありません。また普段、外にいる野犬を見ていて、ペットの犬とは表情が違いすぎて、同じ犬とは思えないと思っていました。
しかし、その野犬出身の子達があんなに甘えた表情を見せるので、最初は触るつもりはなかったのに我慢できず、思わず頭を撫でていました。すると犬がさらに体をすり寄せてきて(犬が太りすぎているので少々重かったですが^^;)、本当に可愛かったです。
私、結構犬が好きだ、と再認識しました。
説明をしてくれたスタッフの女性も獣医さんも掃除担当の方も、皆さんとても熱心で、動物に対する愛情を感じられたことがとても嬉しかったです。
インドの懐の深さを感じ、温かい気持ちになれました。行って良かったです。
【 感想2】
今日、施設に到着した時にまず歓迎してくれたワンちゃん達の体格の良さを見て、とても安心しました。人懐こく擦り寄って来て、撫でてあげると気持ち良さそうにじーっと側に居る様子を見て、CUPAのスタッフの方々がいかに動物達を大切に世話していらっしゃるかをすぐに感じることができました。
馬、牛、ロバ、みんな何かしら傷つけられた経験があるにもかかわらず、穏やかに暮らしていて、人間を恐がる事なく近付いてくるのにも、こちらの心が癒やされました。
娘も、大きい動物はちょっと怖かったけど、かわいかった、他の場所にあるCUPAの施設にも行ってみたい、と言っていました。
最後に、動物を保護していくのにかかる費用の高額な事に驚きました。エコフレンドリーなシステムまで導入された素晴らしい施設ではありますが、少しでも傷付けられる動物が減り、あくまでも短期間の、一時的な保護施設であるよう願います。
いずれペットを飼いたいと考えている私達に、とても貴重な経験となりました。
【 感想3】
車を降りると同時に、わんちゃん(といっても中型犬以上でしたが)の歓迎を受け、一瞬怯んでしまった私でしたが、ただ嬉しいだけの様子を見てホッとしました。
昼間なのに、ぐったりしてなくて、元気一杯の犬たち、栄養も愛情も行き届いている気がしました。
職員の方からの諸注意の後、敷地内を案内していただきました。敷地内は、馬や牛、ロバなど比較的大型の動物がいる割りには、とてもゆったりと衛生的な環境で、動物たちものんびりと落ち着いている印象を受けました。
人にも慣れてて、可愛いのですが、サイズが若干大きめで、普段ぺットして飼っているような猫とは勝手が違って、何処をどう触ってあげればいいのか、下手に手を出して怒らせてしまわないか、正直ドキドキしてました。笑
個人的には、仔牛のyogaとganeshaが気にいってしまいました。
動物保護施設の機能は、その国の文化や方針によって、随分違ってくるため、外国人である私達が支援するのは、価値観の違いもあり、難しい面もあるかなと思います。でもインドでお世話になっている以上、少しでも何かのお役に立てるならという思いで、機会があればこれからも参加して行きたいと思います。
【 感想4】
・路上でけがや餓死寸前の動物たちを収容しているだけかと思っていたけど、競馬場の馬なんかも収容されていてびっくりした。
・施設のいたるところに清潔さを感じて驚いた。
・食べ物が贅沢すぎて、戻されたあとが心配になった。
・行く前の”動物はみんな弱っていて、こちらから近づかない限りは向こうからは近づいては来ないのかな?” という予想に反してずっと私たちにくっついてきて、びっくりした。あまりのスキンシップさにちょっとびびった。
・犬同士、結構な激しいけんかを幾度かしていたので、怖かった。
・すごくかわいいのに、危険なロバがいて、びっくりした!!
・あの施設にいる間はすごく幸せなんだろうな☆ と思いました。
・普段近づけない動物と近づけて楽しかったです♡
【 感想5】
犬に限って言えば、インド政府が殺処分はしないと決定したのであれば、本当にそれだけの心構えがあるのなら、それなりの予算を付け、人員を増やしプロジェクトとしてやっていかなくてはならない問題でしょう。
犬をひとつの場所に集め、避妊手術を確実にし、狂犬病ワクチンを全頭に打つ。その後、いくつかの場所で保護し続けるか、もとの場所に返す。
ただ人として、また宗教上の問題などで動物は殺せないと言っているのであれば、理性的に考え始めなくてはいけないと思います。
いまもインドの人口は増え続けています。
今後食料不足に陥ったとき、10の食料を半分ずつ動物と人間とに分けろと言えるでしょうか?
犬にかまれ狂犬病にかかる路上生活者を運が悪かったで片付けるわけにもいかないでしょう。
ポリオ発症率を0にできたのですから、やるきになれば狂犬病対策もできないわけではないでしょう。
寄付だけで行えるレベルの問題ではないのは明らかです。インド政府、または州政府がどれだけ本気かということだと思います。
【 感想6】
ワンコが想像以上に大きかったですが、3本足のワンコも元気そうで他の動物も元気そうで安心しました。エコフレンドリーな点も素晴らしいですね。
どなたかが仰っていましたが、インドでは人々の間でも問題山積なのに動物を助けてる場合か?という風潮もあるかもしれませんが、これからも続けていってもらいたいなと思います。
【 感想7】
郊外で広々したところで、牛・馬・ロバ達と犬達が自由に過ごしていて、心和む光景でした。
ソーラー発電の計画や、動物の堆肥を使った飼料の栽培などでエコロジーな運営をされているということで勉強になりました。
案内して下さった方が、一匹一匹のここへきた理由や大きな怪我から立ち直ってきたことなどを話して下さり、元気そうに見える子達がかなり悲惨な様子で路上に放置されていたことを知って、この光景が世話する人や動物本人達の大変な苦労から出来ているのだと思いました。
犬たちは怪我をした子だけが一時的にここに居るとのことでしたが、印象的だったのは、後肢が麻痺していたのが自力で立てるようになってきたという小柄な雌犬ちゃん。
犬が大勢集まっているところなので、時々他の犬達から攻撃されていましたが、よく見ているとあまり噛み付いたりしているわけでもなく、広いので逃げ場所もあり、何より、本人は人にかわいがられていることがよくわかるキラキラした表情だったので安心しました。
CUPAはバンガロール市内にいくつかの施設を持っていて有意義な活動をされているとのことで寄付と訪問が出来てよかったです。
動物病院のほうに時々お世話になっています。若い熱心な獣医さんが交代で24時間無休で診察されていて助かります。
【 感想8】
街中で見る野良犬とは違って、人懐っこい犬や体がまるまるした犬が多くいたような印象を受けました。
きっとたくさんの愛情と食べ物を与えられていて、保護されたことですごく幸せな生活を送れてるのかなと安心しました。
慈善団体訪問をすると、自分にできることをしたいという気持ちにさせられます。
インドにもこういった施設があることをMUSEに入るまで知らなかったのですが、実際に訪れることができ、良い経験をさせて頂きました。
また機会があれば訪れたいです。
【 感想9】
CUPA訪れる前は、殺伐とした感じなのかなー。。と思っていたのですが、到着して早々激しい歓迎をしてくれたワンちゃんたちがとても人懐っこくて、どの動物も愛情を受けて育っているのを感じました。
施設も清潔で、動物たちが伸び伸びと自由に生活しているのが印象的でした。
施設を運営していくには、費用がかなりかかると言うお話を聞いて、なかなか苦労もあるかと思いますが、微力ながらお役に立てれるよう、機会があればまた訪れたいです。
〈CUPAのホームページ、及び動物に関する過去の記事のリンク〉
●多岐に亘るCUPAの活動。現在は「象の飼育」に関する裁判も
施設訪問のレポートを記す前に、以下、CUPAの活動について、簡単に記しておく。
■動物救護サーヴィス
市民からの通報を受け、事故、トラブルに直面した動物たちを保護。
■犬やネコの去勢、避妊手術
■狂犬病の予防のワクチン接種
■各種動物保護施設の運営
野良犬、野良ネコのほか、ウマや牛、ロバなどの大型動物、サルや鳥、ヘビなどの野生動物の各種保護施設が、カテゴリー別に市内7カ所に設けられている。精神的にダメージを受けた動物のトラウマセンターも。
■犬やネコの里親との縁組み
■ペット・ケアセンターの運営
各種ペットのトレーニング、治療、ワクチン接種など。
最近では、バンガロールにもいくつかの動物保護関連のNGOが誕生しているらしいが、動物を総合的にサポートする点においては、CUPAが最大の規模であるようだ。
また、動物保護(愛護)運動も積極的に行っており、現在は2つの裁判に関わっている(関わろうとしている)ところだとか。ひとつは、象を個人や企業が所有することについて。案内してくれた女性曰く、象とはそもそも、野生で生きるべき動物であり、人間の保護下で使役動物にされるべきではないらしい。この辺りの詳細は、わたし自身、わかりかねるので、その重要性について、ここで触れるのは避ける。
そしてもう一つ。現在、近隣の州で水族館が作られる計画があり、イルカのショーを売り物にするというプロジェクトがあるとのこと。彼ら曰く、イルカとは、非常に広いスペースを要する生き物で、水族館のプールは狭すぎるらしい。
また、調教されるイルカは多大なストレスに晒されるケースがあり、事故なども含め、死に至らせることもあるという。イルカに関しては、日本のイルカ追い込み漁を描いたドキュメンタリー映画「ザ・コーヴ」のバックグラウンドにも見られる通りだ。
映画の案内役を務めたリチャード・オバリーは、過去、イルカの調教師として活躍していた。しかし、自らが調教したイルカがストレスにより衰弱死したことや、イルカをめぐるビジネスが肥大化したことを悔やみ、その後、イルカ保護の運動家に転身したという。
……と話がそれたが、そんな次第で、CUPAはイルカのショーにも反対する姿勢だとのこと。象やイルカのことについては、一概にその善し悪しを語れるほど、わたし自身、知識を持ち得ておらず、判断することできないので、あくまで客観的に、ここに記録しておく次第だ。
●炎天下の中、保護された動物たちと間近に触れ合う
我々が訪れたのは、市街南西部、マイソールロード沿いのケンゲリと呼ばれる町にある施設。バンガロール大学に隣接した広大な敷地が、Large Animal Rescue and Rehabilitation Centre (LARRC)だ。
メンバーが車を降りるや否や、保護されている犬たちが一斉に集まって来た。センターは訪問者に慣れているため、アグレッシヴな傾向にある犬は、来訪者がある場合に限り、小屋の中で待機させてくれている。
敢えて人間に危険を与えるような動物はいないと聞いていたが、それでも、犬が苦手な人もいたので、少々心配になるほどの、元野良犬たちの「歓迎ぶり」である。
ちなみにわたしは、特別、動物好きというわけではない。
犬からぺろぺろと舐められたりするのは、むしろ苦手である。率直に言えば、気持ち悪い。臭いし。とも思う。
もちろん、親しくなれば、そういう感情は消えるとは思うが、それが本音だ。一方の我が夫は、子供のころ犬を飼っていたこともあり、基本的には犬が好きな様子。さすがに野良犬には手を出さないが、よそのお宅の飼い犬などには、積極的に触りに行く。
ともあれ、こういう場所を訪れる以上、それなりの心構えは必要である。汚れてもノープロブレムな出で立ちで訪れていた。
敷地内に入るや否や、喜んだ犬たちに飛びかかられ舐められ、両足の間、つまりは股間を行き来されたりして、あっというまにズボンが犬の毛にまみれる。ヨダレも付着。……仕方あるまい。
今回、この施設を案内してくれた彼女、シェルパは、ここ数年来、会社に勤務する傍ら、CUPAのヴォランティアスタッフとして関わってきたらしい。が、自分の将来を考えた末、つい10日ほど前に会社を辞し、CUPAにフルタイムで働くようになったとのこと。
香港で生まれ育ち、学生のころ、家族とともにインドに戻って来た彼女。父親が貿易関係の仕事で日本に住んでいたこともあることもあり、日本に対する親近感があるようだ。更には、彼女は我が家の隣のアパートメント・コンプレックスに住んでいたことがわかり、お互い、驚く。
CUPAのPR部門を担当する彼女は、動物に対する愛情が満ちあふれている。彼女だけでなく、他のスタッフや常駐のドクターも、実に自然に、慈愛のある態度で、動物たちに接していることが印象的だった。
足を1本失ったマイケル。足が3本しかない犬は、町中でも時々見かける。動きは鈍いものの、しっかりと自ら歩いている。
広大な敷地の一隅で、ロバやウマ、牛などが集っている。暴れん坊らしいロバは、わたしたちに危害を与えないように、ロープでつながれていた。しかし普段は、どの動物もすべて、放し飼いにしているとのこと。
荷車をひいて働くこの種類の牛の姿は、町中でよく見かける。大半の使役動物は、怪我をして働けなくなり、放置された「瀕死状態」から救出されている。従っては、当初はガリガリに痩せているケースが大半で、この施設に来て、適切な治療を受け、徐々に体力を取り戻しているのだという。
ちなみに彼、ウグラは労働力として使われていたのではなく、儀式的屠殺(Ritual slaughter:詳細は不明)の場から仲間と2頭で逃げ出して来たらしい。逃げるときに、石などを投げつけられたため、負傷していたが、今はすっかり元気になっているとのこと。
ブラウニーは、もともとバンガロール競馬場で活躍する競走馬だった。リタイア後、バンガロール市内にある乗馬スクールで「働いて」いたが、足に怪我をしてしまった。オーナーが管理を怠り、飼育係が姿を消したことから、餌を与えられることもなく、放置されていた。衰弱しているところを、乗馬スクールの子どもたちに発見されたという。他に弱っていた2頭がいたが、生き残ったのはブラウニーだけだったようだ。ブラウニーの首のあたりに手を当てると、気持ち良さそうに大人しくしてくれた。そのあと、さりげなくそばに寄られた。かわいかった。
雄牛は歓迎されず、生まれるなり放置されるケースも少なくないという。従っては、ここにいるのはほとんどが、雄牛。ミスター・ゴースも衰弱しているところを救出された。
たとえばロバを一頭を飼育するにあたり、1カ月約2,000ルピーかかるとのこと。ウマは約5,000ルピー。
今回、ミューズ・クリエイションからは3万ルピーを寄付した。それなりに、意義深いサポートになったと思う。
動物に対する接し方、気をつけるべき点などを、スタッフが丁寧に教えてくれるので、少々不安を感じつつも、動物に触れ合える。
ヴォランティアのスタッフに「ヘアカット」を施してもらったというトール。仲間の2頭とバンガロールの郊外を彷徨していたところを救われた。餌を与えられず痩せ細り、衰弱していたという。
ここは犬の食事を作る給食室。この施設はなるたけ外部のインフラストラクチャーに頼らず、自給自足を目指しているとのことで、燃料は倒木から、水は雨水を再生、電力は太陽光発電によって賄うことを目指しているという。また一画には飼料用の畑(トウモロコシなど)も作られており、牛の糞が肥料となっていた。
犬たちはノンヴェジタリアン。「鶏肉」を食べるという。朝はドッグフードだが、午後は栄養をつけるために鶏肉を食べさせるのだとか。人間が食べられるような立派な料理である。
ここに収容されている動物たちの多くは、 やがてはここを離れる。引き取られて行ったり、もとのコミュニティに戻されたりするらしいが、ここにいる間は「極楽」であろうと思われる。街路で見かける野良犬と同じ出自だったとは思えない、平和な表情。人なつっこさ。
もっとも、参加者が異口同音にコメントしていたのは、「犬が太りすぎだ」ということだった。訪問後のランチのときにその話題が出たので、その場では肥満の理由をスタッフに尋ねなかったが、確かに、肉付きのいい犬が多かった。
「餌を与え過ぎなのではないか」
との声も上がったが、あまり太ってる太ってると言われると、自分のことでもないのに、なんだか身につまされる。気になったので調べてみたところ、去勢手術をした犬は、太る傾向にあるとのこと。
だということで、 今のこの彼らの充足感を、 許してやって欲しい。
敷地内を一通り見学した後、シェルパに案内されてオフィスへ。ドアを開けるなり、我々が中に入るより先に、我先にと室内に飛び込む彼ら。
冷たいタイルが心地いいのか、べろ〜んと伸びるスノウイー。昔は雪のように白かったからSNOWYだったらしいが、今は汚れが染み付いたのか、白くなくなってしまったとのこと。……こうして見ると、やっぱり、ちょっと太り気味のようですね。
実にいろんな種類が存在する、ウシ科の動物。