坂田マルハン美穂のインド生活通信

 
 

本日のおやつはロールケーキ。今回、クリームだけでなく「具」もいれてみようと、マンゴーを小さく切ってちりばめてみたが、仕上がりのイメージがつかめておらず、マンゴーが少なすぎた。笑っちゃうほどみすぼらしいが、おいしければそれでいいのだ。

本日の参加者もみな、喜んで食べてくれた。もちろん、マイハニーの分も取り分けておいた。さもなくば、たいへんなことになる。

状況に応じて作ろうと、インゲンやホウレンソウなども用意していた。牛肉もあった。また参加者に人気の「カルボナーラ」も余裕があれば作ろうと準備はしていたが、思いがけず皆さん「チャパティ作り」に熱中して時間をとられたこともあり、最早、余力はなかった。

なんとなく、バランスがよいとは言い難いメニューとなったが、主目的は「調理実習」ゆえ、これでよし、である。

食事を終えた後も、なんだかんだと飲み、語り合い、夜は更けていったのだった。翌朝、喉が枯れたが、楽しかった。終盤、自分が「人生を熱く語る人」になりつつあるのが自覚されたが、まあ、そんな日もあるだろう。

こうして若人と話をしていると、自分がいつも、「高校の体育教師」になった気がするから、不思議である。竹刀を片手にジャージー姿で、男子生徒を叱咤激励する図。

とまあ、そんな次第で、いい夜だった。

今度は、一度、調理実習を経験した人向けに、イタリアンやコンチネンタルのメニュー(パスタやピザなど)の講習も実施しようと思う。チャパティ同様、ピザの生地作りで盛り上がりそうな気配がする。

わたしも益々、精進せねばである。

キュートな女子とは対照的に、男子とは、エプロン姿になるだけで笑える人がいるから、失礼ながら楽しいものである。奥様のエプロンを借りて、まるで金太郎の「腹掛け」になっている人もいて、微笑ましい。

エプロン姿になるだけで盛り上がる調理実習。いい滑り出した。

さて、調理実習の目的は、インドの食材を使って「いかに簡単においしく、ヘルシーな料理を作るか」がテーマである。

今回は、下準備を一切しなかった。購入した素材をそのままから、洗って切って調理したほうが、実践的だと判断したからだ。

各種野菜のほか、鶏肉3羽、豚バラ肉、牛肉フィレ、ポムフレット、ソーセージなど、さまざまなノンヴェジも用意しておいたが、結果的には鶏肉と豚肉の料理でいっぱいいっぱいであった。

さて、まずは毎度おなじみの鶏肉の解体である。

鶏肉はもちろん切られた物が売っているが、丸ごとの方が、素材をくまなくおいしく使えることに加え、鶏肉全体の構造が掴めて勉強になる、という利点がある。

鶏肉をビニル袋から取り出し、お尻からレヴァーと砂肝がポロンと出てくるということだけでも、「おお〜っ」と歓声が上がり、エンターテインメントである。

当然ながら、1羽につき、レヴァーも砂肝も一つずつである、という事実を目の当たりにして、「たったそれだけ?」と驚く人がいる。確かに普段、同じ部位ばかりを食べていると、その少量さが違和感である。

わたしは、自分で鶏肉を解体するようになって、ひたすら手羽先だけとか、レヴァーだけとか、偏った部位だけを食べることに微妙な抵抗を感じるようになった。くまなく全体を食す方が、気分的に腑に落ちるようになったのだ。

先生(わたし)が慣れた手つきで、関節からす〜っと静かに切って解体していく様子は、自分で言うが、なかなかの見物である。中国料理店の店頭で見かけるがごとく、巨大な包丁でバンバンと豪快に切らずともいいのである。

毎度必ず誰かが、「それ、包丁がすごくよく切れるんでしょ!?」と言うが、それだけではない。力を入れずにきれいに解体するには、コツがいるのである。そのあたりを伝授しつつ、2羽目、3羽目は、参加者に切ってもらう。これがまた、理科の実験のようで、みな真剣だ。

備忘録を兼ねて、まずは本日作ったものを記しておく。あとは、調理の風景写真などを。

なにしろ、オーヴンが稼働するキッチンで総勢11名。換気扇を回し、天井のファンを回しても、かなりの熱気である。料理に手一杯で、きちんとした写真は少ないが、それでも臨場感は伝わるのではないかと思う。


◎丸ごと鶏肉のダッチオーヴン・グリル

最近ブームのアウトドア料理のキッチン版。先日、インドでのオンラインショッピングで購入した米国のダッチオーヴン。これを使ったチキンのグリルがやたらと好評なので、ともかく作ることにする。材料は鶏肉のほか、ジャガイモ(今回は小さいものをそのまま使用)とニンジン、玉ねぎ、そして塩こしょうとオリーヴオイル、ギー。

インドの不揃いな野菜、特に玉ねぎなどを、いかに効率よく切るかなどについても説明する。なにしろ皮が厚かったり、形が不揃いだったりで、切りにくいからと敬遠する人が多いのだ。しかし、インドの玉ねぎは炒めれば甘みが格別に増し、濃厚で旨味がしっかりとある。野菜というよりは、薬味、調味料としての働きが強い。

この料理は下準備は簡単だが、90分ほど焼かねばならないので、まずは最初に作ってオーヴンに投入する。

◎具もたっぷりの、鶏ガラスープ

解体した鶏肉2羽のうち、食べやすい部位をカレー用に、残った胴体の部分をまとめて、鳥ガラスープにすることにした。

まず、ショウガの千切りだけを加えて、塩も入れずにそのまま鶏肉だけを茹でる。ひたすら茹でている間、時々灰汁を取りつつ、他の作業を行う。1時間ほども煮込んだら、かなりいい出汁が出る。

これをまず、「塩を入れただけ」で味見をしてもらう。それだけでも、異口同音に「うまい!」と感動の声が上がるほどにうまい。ラーメンのスープになりそうな味わいだ。

これに、次は醤油をいれる。こうなると風味が一段とよくなり、「うまい!」「おいしい!」の声が更に高まる。

実は従来は、ここで終わりであった。

ところが実は、先月、ふと思いついてこれにバルサミコ酢を入れてみたところ、これがもう、「プロの味?」というくらい、すばらしくおいしくなったのだ。というわけで、バルサミコ酢を入れたものを皆に回したら、最早、うなり声である。

味見で、スープが枯渇する勢いだ。もちろん、「出汁の素」となった鶏肉も、味わい深い。特に皮の部分、骨と接する部分の肉が柔らかく、男子がつきっきりで解体して、みなに配給している。

左上は、スープに使用した調味料。塩、醤油、そしてバルサミコ酢だ。右上は……。スープの味を見るためにカップを支給したのだが……。肉は小さく裂いて入れて欲しいものだ。給仕担当男子に肉塊を投入されて戸惑う男子。しかし、その部位は、脂が程よくのって旨いぞ!

さて、以前から幾度も書いている気がするが、我が家には日本の食材、調味料は必要最低限しかなく、食品添加物の多い加工食品は極めて少ない。その分、少々割高でも、素材がよく、添加物が少ない、質のよいものを買うようにしている。それらは、年に一度の日本旅、そしてニューヨーク旅にて調達している。ちなみに……

日本米は、日本では九州産の有機米。ニューヨークではTAMAKI GOLDを調達。

醤油は日本では茅乃舎のもの。ニューヨークでは、売られている中で最も品質の高い生醤油。

ごま油は、ともかく自然で品質がよさげなもの。

はヒマラヤの岩塩。

味噌もやはり茅乃舎のもの。

だしも、しつこいようだが茅乃舎。無添加和風だし&野菜だしがすばらしい。

ちなみに上のバルサミコ酢はニューヨークで買ったイタリア製。なんとなく、去年購入していたのが、非常においしかったので、今年も買って来た。

ちなみにインドでは、イタリアのパスタやオリーヴオイル、バルサミコ酢などが種類豊富に輸入されているので、特に調達する必要はない。

◎そして欠かせない、チキンカレーとチャパティ

インドに住んでいるのだから、せめて市販のカレー粉を使うことなく、自らスパイスを調合したカレーを作れるようになっておきたいものである。というわけで、定番の、チキンカレー作りも伝授。

写真は撮り忘れたのでないが、ともあれ大量に作った。カレーを煮込んでいる間、チャパティの生地作り。まずは水とAtta(全粒小麦粉)を混ぜ合わせて捏ねた生地を、しばらく寝かせておく。その間に他の料理を作る。

チャパティ作りは、毎回、人気が高い。今回も、みなそれぞれに、個性豊かな形状のチャパティを焼き上げて楽しんでいた。


◎豚バラ肉で2種類の料理。野菜たっぷり煮込みと立田揚げ風。

まずは、ダイコンとナスを適当に一口サイズに切ってもらい、その上に、味噌や酒、茅乃舎の和風だしなどで適当に味付けしておいた豚肉をちりばめ、蒸し煮る。

それから、我が家でも人気のエアフライアーを使った豚バラの立田揚げ風。これは作ってその場で熱々を味見してもらったのだが、やはり大人気。エアフライアーを買いたいとの声が随所であがる。

●そして、晩餐会に突入。飲んで食べて語って、都合8時間超。

チキンカレーがほどよく煮込まれ、鶏ガラスープはすでに残骸と化し、トウモロコシは鮮やかに蒸し上がり、豚肉とダイコンとナスはじっくりといい塩梅に煮込まれたころ、オーヴンの中の丸ごとチキンのこんがりと焼き上がった。お腹の空洞に詰め込まれたレヴァーやニンニクなども、ホクホクに仕上がっている様子だ。鍋底には、肉と野菜のスープがにじみ出た「美味天然ソース」が漂っている。これが格別に旨いのだ。

というわけで、まずはビールで乾杯! そして各々、料理を取り分け、ダイニングルームで夕餉となった。