インド百景。

坂田マルハン美穂のインド生活通信

 
 

●新しいホテルが次々と。新しいダイニングのシーンも次々と。

先週の水曜日は、バンガロールの日本人女性から構成される「さくら会」のランチ会であった。数カ月に一度、会員同士の親睦を深めるために開催されるランチ会。昨今は、新しいホテルやレストランが次々にオープンしているものの、新規開拓をあまりしなくなった身にとっては、初めて訪れる店も少なくない。

このホテルはまた、市内に最近オープンしたヒルトンホテル。コンチネンタル、インド料理、オリエンタルと、多彩なメニューを提供するブッフェであった。

思えば9年前に移住した当初は、高級ホテルと言えばタージ・ウエストエンド、オベロイ、ITC、リーラといったインドの高級ホテルが主流だった。しかし今では、シェラトン、ヒルトン、ハイアット、リッツカールトンにJWマリオット……と外資系が続々と誕生し、その分、ダイニングのシーンもぐっと増えた。

以前に比べれば、年々、暮らしやすくなっているバンガロール。ゆえに、さくら会に入っていない新しい駐在員夫人も少なくないようだ。それもまた、自然の趨勢だろう。わたし自身、駐在員でも駐在員夫人でもないし、米国在住時には、駐在員夫人との交流は皆無に等しかったが、しかし、インドに来てからは、なぜか心境がかわった。

日印をつなぐ仕事が中心で、日本人社会との交流も多く、「日本人として」を日常的に意識するようになった。なにしろ日本に生まれ育ち、30歳までは日本で働いてきた身の上。ゆえに、日本人だからこそできること、を追求したいと思うのは、自然のことかもしれない。

というわけで、日本人駐在員の方々を対象とした、こちらは土曜日のセミナーの写真。毎度恒例の調理実習前のエプロン姿、記念撮影だ。今回はなぜか、マイハニーも少しだけ参加。初のエプロン姿だ。

●金曜日は奥様向け、土曜日は駐在員向け「食と健康」のセミナー。

バザールが終わった翌週だし、少しはのんびりとしたかったのだが、なぜかタイミング的に、2日連続のセミナー実施となった。しかし結果的に2日続けてというのは、準備が一気にできて、家のレイアウトも2日間セミナー仕様に放置しておけばよかったので、効率がよかった。

まず金曜日、サロン・ド・ミューズのある日の午前中に、11名の駐在員夫人をお招きしてのセミナーを開催。こちらは調理実習がない。今回はお子さんを持つ方が大半。いつもの通り、生活ガイドブックになり得る充実の資料をお渡しし、それに沿って、健康管理にはじまり、食生活のお話をする。

思いがけず、インドという地に赴任されることになり、いろいろな不都合や不満はおありかもしれない。しかし、一旦暮らし始めた以上は、ここでいかに快適に暮らすかを考え、実践的に取り組むことこそ、大切なことだと思われる。

なにかと「便利」な日本では、たいして料理をしなくても、そこそこおいしいものが手に入る。しかし、インドではそうはいかない。暮らしに工夫や創造力は不可欠だ。手間もかかる。しかし視点を変えれば、それは、楽しいチャレンジでもある。

日本で働いていた方にとっては、異国で専業主婦になるというのはまた、違和感のある状態であるかもしれない。しかし、やはり来た以上は、家族の健康を守るためにも、得手不得手、好き嫌いはさておいて、料理だけは必須項目として、しっかりした方がよい、と思うのだ。

掃除洗濯などの家事はメイドに任せられるかもしれないが、料理は異質。食は命だ。

インスタント食品など加工食品に頼るのではなく、なるだけ質のよい新鮮な素材を買い求め、安全でおいしい料理を作り、家族の心身を慈しむことも、伴侶の重大な役割だと思う。

この際、女だから、男だから、ということは関係ない。

夫に生計を立ててもらっている以上は、専業主婦である妻は家事をするのは当たり前のことである。もしも妻が駐在員で夫が帯同しているのであれば、その逆もありきだ。ともかくは、時間がある方が、料理をし、健康管理をする。そういうことだ。

働く伴侶が元気でなければ、家族の平和な暮らしは、ない。

しっかりしたものを食べていなければ、心身ともに、元気が出ない。元気がでなけりゃ仕事にならない。仕事ができなきゃ、生活できない。単純な話である。

そんなわけで、学生や単身赴任者、独身者には「自炊」の重要性を説き、駐在員夫人には、家族の胃袋を支える「内助の功」を説くのであった。こんなことを言えるようになったのも、自分が歳を重ねたからこそ。10年前なら言えなかったことを、はっきりと言えるようになったのは、経験ゆえである。歳を重ねるのも、悪くない。


●今回もまた、ユニークな面々。ビール片手に邪道、調理実習

そして土曜日。大半が駐在員の参加者だ、午後2時半から4時過ぎまではセミナー。その後、おなじみ「カステラ」でティータイム。質疑応答を終えたあと、いよいよ調理実習だ。今回は今までと異なり「ともかく、簡単においしくできる料理を」と考えていた。なにしろ、北インド風チキンカレーやチャパティなどを作っても、結局、家で作る人はほとんどおらず、その場で盛り上がったきり、というケースが多いからだ。

が、蓋を開けてみれば、みなチキンカレーが作りたいという。チャパティも作りたいという。そんな次第で、やはり、丸ごとチキンの解体から始まった。

そして再び、ご就寝。かわいい……。このごろは、大きくなったせいか、よく寝るようになった。7月に生後7カ月程度と言われていたから、今は9カ月程度。身体もどんどん大きくなっている気がする。なにしろ体重がこの2カ月でぐっと増え、2.7キロだったのが3.5キロになっていた。見た目よりも、どっしり感がある。

食べさせすぎないよう気をつけているが、半野良の彼女は、外で何を食べているかわからないからコントロールができない。まあ、日々走り回って運動は十分なので、当面はこのままでいいだろう。

猫がいる暮らし。思ったよりもずっと楽しく、平和で、やさしい。

ところで母を連れて行ったのは、UBシティにあるM&W。「年配女性のショートカットが上手なシニア・スタイリストを」とリクエストしたところ、彼女が担当してくれた。

彼女、ハサミを丁寧にゆっくりと扱いながら、実に慎重にゆっくりと、カットをしてくれる。「もう、終わり?!」というほどに、さっさとすませるスタイリストが多い中、彼女は珍しいタイプである。

母のスタイルも、とてもうまく仕上げてくれて、白髪と染めた部分の違和感がなくなり、とてもいい感じ。

5月のニューヨークで切って以来、放置したままの我が頭髪。次回は英語の先生のシブが紹介してくれたスタイリストを試してみようと思っていたが、彼女に切ってもらおうかと思っているところだ。

鶏肉は、毎回2羽を準備。1羽の半身を解体して見本を見せた後、参加者にもナイフを投入していただく。今回はマイハニーも瞬間的に参加。彼が包丁を持つことなど、「超、稀」なので、記念すべき写真である。ドラムスティックを、意外にも上手に切り分けて、得意な様子。エプロン、はだけてますけど。

さて、写真がないので、備忘録を兼ねて、この日用意した食材と、調理したものを記しておく。ともかくチキンカレー以外は、最低限の素材で簡単に作れるものばかりだ。

  1. 1.チキンカレー:チキンカレーの準備のため、チキンを解体。そのあと、全員で手分けをして、トマト、玉ねぎ、ニンニク、生姜のみじんぎり&ペースト下ごしらえ。玉ねぎの簡単で効率的な剥き方なども伝授。なにしろインドの玉ねぎ、ワイルドなので、剥きにくい。が、コツをつかむと手早く簡単に作業ができるのだ。

  2. 2.チャパティ:チキンカレーを煮込んでいる間に、チャパティを捏ねる。しばらく寝かせておく必要があるので、先に準備。

  3. 3.滋養たっぷりチキンスープ:チキンカレーで使ったチキン2羽。胴体の骨の部分を残しておき、それを大鍋に。水とショウガと塩少々を加えて、煮込む。じっくり煮込む必要があるので、カレーと共に、先に火にかけておく。

  4. 4.蒸し野菜:簡単調理に蒸し器は便利。というわけで、インドでよく見かける野菜、インゲンとベビーコーンを下準備して蒸し器に投入。包丁を使わずに下準備が簡単にできるものを選んだ。普通のトウモロコシやブロッコリー、ニンジン、ジャガイモ、マッシュルーム……と、どんな野菜もまとめて蒸せば、洗いもの最低限で簡単クッキングである。味付けは、塩こしょうやオリーヴオイルなどで十分。

  5. 5.ポムフレット(マナガツオ)の塩焼き:これは丸ごとのポムフレットを使用。オーヴントースターにクッキングシートを敷いて(なくても大丈夫。あれば洗う時が簡単)、その上に魚を並べ、塩こしょうをまぶす。こんがり焼けるよう、表面にごま油を塗ってオーヴントースターに入れて加熱するだけ。オーヴントースターはかなり高温ゆえ、魚を焼いても庫内が臭くならないので便利。

  6. 6.牛フィレのバター焼き: 牛肉のフィレを取り出し、焼き肉風にスライス。フライパンにバターをしいて熱し、塩こしょうをした牛肉を強火でジャーッと焼く。ほどよく焦げ目のついたミディアムを皿に盛り、各自フォークを片手に味見スタート。早くも、ビールをあけて、乾杯をしてしまうのだった。

  7. 7.エリンギのソテー: 牛フィレを焼いたあとのフライパンで、エリンギ(ミルキーマッシュルーム)を手で適当に割いたものを炒める。これがまた、歯ごたえよく、香ばしくておいしい。

  8. 8.インディアンサーモンのムニエル: エリンギを焼いている間に、3枚に下ろしておいたインディアンサーモンに塩こしょうをして小麦粉をまぶす。またしても同じフライパンに、改めてバターを入れてこんがりと焼く。バターのかわりにオリーヴオイルでもよい。同じフライパンを使うのは、最低限の調理器具で料理ができることを実証するためでもある。

  9. 9.豚バラ肉と白菜の蒸し煮:上記の料理を次々に作りつつ食べている間にも、和風味の伝授。といっても超簡単。豚肉に醤油、白ワイン、茅乃舎の和風だし、この3種のみを加えて混ぜる。こってりさせるなら味噌なども加えていいが、ともかく今回は「ミニマム」をということで、少なめの調味料だ。豚肉をマリネしている間に、白菜を準備。全体を4〜5センチに切ったあと、繊維に沿って、縦にざく切りしてもらう。こうすると、白菜の歯ごたえが残っておいしいのだ。フライパン(今度は洗った)に、ごま油を敷き、白菜を載せ、その上に味付けしておいた豚肉を載せる。蓋をして蒸し焼く。

  10. 10.ドライフルーツ入りヨーグルトのクリーム:パーティ時のおつまみにも人気の、我が家の定番。クリームチーズなどがなくても、十分に新鮮なクリームチーズ風が楽しめるのだ。ボウルの上にザルを置き、その上にコーヒーのフィルターや布などを載せて、その上にヨーグルトを入れ、冷蔵庫に入れて数時間、水分がしっかりと切れたらクリーム状のヨーグルトにドライフルーツを刻んで混ぜる。クラッカーなどと一緒に食す。乳製品は、空きっ腹のアルコールから内臓を守る働きがある。というわけで、やさしいスナックでもある。

このほか、ムサンビ(スイートライム)の絞りたてジュースの味見、コカムジュース(炭酸割り)の味見など、ビール以外に、ヘルシードリンクのテイスティングなども。

そして毎回、盛り上がらずにはいられないチャパティ作り。このときには、写真撮影の余裕もあり、カメラを構える我。1名を除いては、ほとんどがチャパティ初心者。

伸すのは、なかなかに難しい。コツをつかむまでは、何度か挑戦する必要がある。黙々と、伸すのに夢中になり、打ち粉が少なすぎて台に張り付いてしまい、破れてしまうのはよくあるケース。破れた部分を補正する女子。

まだ数週間前に赴任されたばかりの男子。さっそく参加してくださった。1枚目の不格好なチャパティから、2枚目にはきれいな円形に! 右の女子は、かつてインドの家庭でしばしばインド料理を作っていたとのことで、チャパティ作りもお手の物。慣れた手付きできれいに伸して、普段はあまりチャパティを作らないわたしよりも、ずっと上手であった。

チャパティ作りの醍醐味。それは専用のフライパンで焼いた後、最後に直火に当ててぷっくりと膨らますところにある。これが膨らむか膨らまないかが見どころで、みな、真剣に見守るのである。膨らむと、一斉に喜びに沸くのである。

何枚もチャレンジし、どんどん向上する腕前。膨らむ人、膨らまない人、悲喜交々である。

他の料理の写真も撮っておけばよかったのだが、作って即、試食を繰り返したため、なにもなく。豚肉と白菜の蒸し煮は辛うじて一枚。

チャパティをピタ・ブレッド風にして、中に白菜と豚肉を詰めて食べる女子。どんな食べ方でも、おいしければ、それでよし、だ。

ふっくらときれいに膨らんだ自作のチャパティを愛おしそうに食べる男子。無精製の小麦粉 (ATTA) と水だけでできる、超シンプルな主食は、なかなかのエンターテイナーである。これ、実はピーナッツバターをつけて食べてもおいしい。というわけで、我がお気に入りのオーガニックのピーナッツバター(砂糖が入っていない純粋にピーナッツのペースト)を冷蔵庫から取り出して試食。

各種料理を味見しつつ、それぞれに好反応だったが、やはり最も人気があったのは、鶏肉のスープ。いつものように、塩味のみから味見をしてもらい、醤油を加えたもの、そしてヴァルサミコ酢を加えたものを三段階で味見してもらう。味覚の実験さながらに、旨味が増すのを体験してもらうのは、見ている方も実に楽しい。たくさんのスープは味見ですっかり、すっからかんとなってしまった。

料理の大半は、調理中に試食したため、テーブルで落ち着いて、の食事はチキンカレーと豚肉&白菜という微妙な取り合わせのメニューとなった。ともあれ、改めて、乾杯&いただきますだ。

今回のセミナー、実は2週間ほどまえに急に決まったことだった。駐在員女子のひとりがFacebookで「日本料理の作り方を教えて欲しい」的なことを書いていたのだが、スルーできずに「今度、食のセミナーを受けてください」といった旨、コメントしたところ、他の駐在員女子からも反応が来て、急に開催することになった次第。

しかし、いくらなんでも2人のためだけに、というのは少なすぎるので、他の駐在員2名にも声をかけてもらった次第。わたしの方はといえば、水曜日に出会ったばかりの新駐在員男子を早速誘った。その5人だけのはずだったのだが、ミューズ・クリエイションのメンバーである駐在員妻1名が、「ぜひ調理実習に参加したい」とのことなので、すでにセミナーは受講済みながらも、改めて受けてくれたのだった。

いつもは定員10名ほどと、ついつい多めになってしまうが、キッチンでの使い勝手を考えると今回の計7名はちょうどいい感じだった。都合10種類の料理と試食も、そこそこ速やかに進んで、充足感も満点。

この熱血調理実習は、なかなかにエネルギーを要するのでしょっちゅう開催、というわけにもいかないが、ともあれ、需要があれば積極的に開催して行きたいと思っている。

今回参加の面々は、まだ「インド・ライフスタイル入門編」を受講されていないので、次回はこちらを受けていただきたいところだ。

本来ならば、バンガロールに特化したバンガロールを多角的に学ぶべくセミナーや、インドの偉人、著名人を通してインドを知るセミナーなど、他の企画も考えているので実施したいところだが、なかなか手が回らない。ともあれ、基本の「入門編」と「食と健康」は、必須であるので、ご興味のある方、数名集まれば実施しますので、どうぞ「オンデマンド」セミナーをご利用ください。

【おまけ:なごみのNORA世界】

『インド百景』にも記したが、NORAに「こじゃれたバンダナ」を作ってみた。しかしそれは、よだれかけにしか見えないのだが、ともあれ、バンダナそのものはかわいい。実はこれ、ミューズ・クリエイションのチーム布のメンバー作成の「手のりトート」と同じ素材で作ったのだった。あまりにも、かわいらしいおそろ、である。というわけで、寝込みを襲って記念撮影。

いかん、起こしてしまった!