BANGALORE GUIDEBOOK バンガロール・ガイドブック
●海外赴任者とその家族が見舞われるストレスの例
メンタルトラブルの要因には、インドにおけるポジションや業務責任のレベル、個々人の性格、周囲の人々の傾向、住まいやオフィス環境など、さまざまな事象が影響します。ここでは、一般に見舞われやすいストレスの要因を挙げてみます。
【海外駐在員本人】
◎日本とバンガロールとの生活習慣や文化、価値観、職場環境の違い
(どこがインドのシリコンバレーだよ?! まじで道路に牛かよ!)
◎前任者との引き継ぎ不全、もしくは立ち上げで前例がない不安
(笑顔で去って行ったけどさ。課題、丸投げされたこっちの身にもなってよ)
◎日本側「理想論」とインド側「現実」との超絶板挟み地獄
(バンガロールで「OKY!」O(おまえが)K(ここ来て)Y(やってみろ)を叫ぶ)
◎日本人の上司や同僚、あるいは部下との人間関係
(毎週毎週、ゴルフとカラオケと飲み会とか。まじ日本人がむしろ負担)
◎現地スタッフとの人間関係。理解不能な心の動き。忖度ゼロの世界
(いやいやいや 、この間あんなにやる気、見せてたのに、辞めるの?!)
◎畳み掛けるように襲いかかる業務上のトラブル、アクシデントの嵐
(もう電話に出たくない。メールも見たくない。君の話も聞きたくない)
◎各宗教の祝祭日に加え、ストライキだのなんだのと、頻発する業務停止
(えっ? また休み? デリーは営業してるよ。え? 南だけ?)
◎クリケットのシーズン及び年後半のホリデーシーズンには停滞する業務
(みんなさ、遊びの合間に働いてるよね。それでも世の中、まわってるよね)
◎年平均、週休4〜5日制か。と、思えるほどの効率でしか進まない作業
(2年でブレイクイーブンとか無理だから。最低5年くれ。てか帰らせて!)
◎自身の英語能力の不足によるコミュニケーションの不全
(自分で自分が何言ってるかわからないんだから。通じなくて当然だよね)
◎異なる環境での生活に際しての健康問題
(慢性的に下痢だな〜。毎日が断腸の思いだからな〜。大丈夫かな……)
◎帯同してきた妻や子どもの問題
(妻は引きこもってるし、子どもは学校が辛そうだし、どうすりゃいいんだ)
◎日本に残してきた妻や子ども、あるいは両親の心配
(SkypeとかFaceTimeとかあるけどさ。顔見なくてもいいとか言われてさ)
◎日本に残してきたガールフレンド、ボーイフレンドが浮気しないかの心配
(やっぱ、次の一時帰国でプロポーズだな。断られたら、インドのせいだな)
◎身近に相談相手がいない。寂しい
(たまに飲み会に参加するけど、愚痴の嵐で、気が滅入る。でも寂しい)
【海外駐在員の妻】
◎日本とバンガロールとの生活習慣や文化、価値観の違い
(なにこの国。牛乳、煮沸して飲むの? 床、箒で掃くの? 昭和?)
◎仕事を離職、休職して帯同したことに対する不満、不安
(自分の服を買うのに、いちいち夫の確認、取るとか、耐え難いんですけど)
◎子育て、育児、子どもの学校の問題
(先生の言ってる意味がわからない。英語無理。せめて文章に書いて)
◎夫の精神状態、健康状態に対する心配
(夫は出張ばかり。最近、白髪が増えてる。夕飯くらいは家で食べて欲しい)
◎ドライヴァー、メイド、ナニーなど使用人のマネジメントの困難
(ドライヴァーが時間通りに来ない。メイドの欠勤が多い。どうしよう)
◎狭い日本人社会での、人間関係のトラブル
(毎日のようにランチに誘われて、悪口を聞かされる。断れない自分もいや)
◎会社によって異なるサポート体制に対する不満
(うちは買い出し休暇もなければ、土曜も出勤。旅行にも行けない)
◎日本に残してきた両親の心配
(父の体調が思わしくないらしい。すぐに会いに行けないもどかしさ)
●海外赴任者が直面するトラブルの、根源的な要因
上記では、異国インドにおける外的要因を主に挙げましたが、日本が駐在員を派遣するに際しての、根源的な問題も看過できません。日本企業が海外進出をして久しいものの、現在もなお、従来と変わらぬトラブルが改善されていないケースが多々あるようです。その要因として、
●適材適所ではない。赴任先で、従来と異なる業務を与えられるなど、職域におけるミスマッチング。
●海外に暮らすのが嫌い、新しい環境が苦手、英語もできない、行きたくもない土地に、ほぼ「無理矢理」赴任させられるなどの不適切な人事。
●大手企業は駐在員派遣の経験値があり、家族含めて講習会などもある。一方、昨今は中小企業の進出が目立つが、ノウハウの蓄積がないため試行錯誤。
●日本の長引く不況が原因で、会社側が駐在員の数を削減。「日本人一人」にかかる負担と責任が増大。過重労働による肉体・精神疲労が多大。
●日印の、極端なまでのビジネススタンダードの相違に関しての、日本側の不理解。準備不足。日本側の要求に答えようとする駐在員の「生真面目さ」「完全主義」「責任感の強さ」が、裏目に出る。
●海外赴任者がかかりやすい心の病気
精神疾患には、うつ病、パニック障害、統合失調症、適応障害、睡眠障害などさまざまな種類があるようですが、駐在員やその伴侶がかかりやすいのはうつ病、また神経症性の不安緊張状態だそうです。子どもはさらに、情緒行動障害や環境不適応などの傾向も見られるようです。
【うつ病の症状】
〈こころ〉
・意欲が減退し、憂鬱。朝、起きるのが辛い。
・考えがまとまらず、気持ちが落ち着かない。気分にむらがある。
・不安や焦りを感じる。
・自分を責める。
・本や新聞、書類などを読んでも、内容が頭に入らない。
〈からだ〉
・身体がだるく、熟睡できない。食欲がない。
・動悸、息苦しさ、口内の渇きが顕著。
・肩こり、胃痛、頭痛、便秘、下痢などの症状が顕著。
●心が疲れている兆候が感じられたときには……
不調の兆候が見られたら、ストレスの要因を見つけ、そこから離れる、もしくは改善するよう試みることが勧められます。早い段階で、カウンセラーにかかることが大切です。3カ月以内の症状であれば症状は軽減するとのことですが、3カ月以上続く場合は、要注意だとのこと。職場や生活環境の改善が望まれます。半年を超えると病気と診断され、帰国を余儀なくされるケースもあるとのことで「ただ様子を見る」だけでは、危険な場合もあります。
最近でこそ、日本でもカウンセラーにかかることが一般化しているようですが、それでも日本人の多くは、未だにカウンセリングを受けることに抵抗がある人が多いようです。日本以外の先進国の多くは、企業内にカウンセラーがいるのは一般的ですし、学校にも必ずカウンセラーがいて、子どもたちの様子を見守っています。インドの学校でも、インターナショナルスクールに限らず、一般のプライヴェートスクール、あるいは慈善団体が運営する貧困層の子どもたちの学校にも、必ずカウンセラーがいて、子ども一人一人の状況を把握しています。
まずは、「心の病気」を軽んじたり、あるいは「恥ずかしいこと」という先入観を捨て、「自分、ちょっと様子が変かも……」と思った時には、身近な人に相談したり、メンタルヘルスの問診を受けたり、あるいは一時帰国をして、健康診断だけではなく、心療内科にかかるなどして、傷が浅いうちに対策を講じたほうがいいでしょう。
なお、日本では、心療内科の治療費は健康保険が適用されますが、カウンセリングに関しては、保険の適用外だとのこと。ちなみにカウンセリングとは、軽度のうつ症状の人が「薬物に頼らず症状の改善を目指す」もの。メンタルヘルスのケアに関しては、会社によって福利厚生の内容も異なるようなので、赴任前にあらかじめ確認しておくのも大切かもしれません。
いずれにしても、多少お金がかかったとしても、心の不調は身体の不調同様、初期症状のうちに治療を試みた方がよさそうです。
家庭では夫婦が互いに、もしくは親が子どもに、会社では同僚や上司、あるいは部下が、それぞれ関わり合いのある人の不調に、少し敏感になることも望まれます。気分転換すべく、食事に誘ったり、イヴェントに出かけたり、趣味のスポーツをするなど、日常の業務から離れる時間を作ることも大切でしょう。
なお、バンガロールにも、もちろん精神科はありますが、日本人にとっては、日本語で相談するのがいちばんかもしれません。バンガロールには現在、あいにく日本人の精神科医がいませんが、多くの日本人駐在員家族が「買い出し休暇」に訪れるバンコクの在タイ日本国大使館には、一等書記官兼医務官の阿部尚さんが在勤されています。
実は、この項は、2019年4月3日、在ベンガルール日本国総領事館にて開催された阿部尚さんの講演の内容も、参考にさせていただいています。阿部さん曰く、バンコクまで来ていただければ、バンガロール在住者にも対応されるとのことなので、心の相談をされたい方は、立ち寄られてはいかがでしょう。
●問い合わせ先:在タイ日本国大使館(www.th.emb-japan.go.jp)
●ストレスをためないために。ストレス・コーピング
「ストレス・コーピング」(Coping with stress) とは、日常生活においてストレスを感じた際、そのストレスと上手に向き合うための技術や能力、対処法のことです。ストレスを認識し、適切に対処することで、ストレスは軽減できるとされています。
〈正しいストレス軽減の方法:意識的に実践したいこと〉
1.休む:休暇を取る。旅行は可能な限り「奮発」して、いい経験をする
2.発散する:友人と話す。エクササイズ、スポーツ、趣味の時間を持つ
3.緩和する:ヨガや呼吸法で心身を整える。スパでマッサージを受ける
4.おいしいものを食べる:多くの日本人には、ごはんと味噌汁が効く
自分に合った「気分転換」や「ストレス発散」の方法を見つけだすことが大切。映画を見る、読書をする、音楽を聴くなど……。
〈間違ったストレス軽減の方法:意識的に控えたいこと〉
●飲酒
適度な飲酒は心身にいい……という学説が発表されるたびに、わたしは個人的に、そうだそうだと頷いてきたが、どうやら昨今では、飲酒にいい要素はないという説が主流らしい。ともあれ、お酒はおいしいし、飲めば楽しい。というわけで、飲み方に気をつけつつ、「適量」を心がけたいものだ。
*お酒は、身体を「燃やし」「乾かす」ので、水を飲みつつ、飲む。
*運動のあとなど、乾いた身体にビールを流し込むのは自殺行為。あらかじめ、「室温の水」を飲んで、身体に水分を与えておくべし(←最初は抵抗を覚えるが、慣れるとノープロブレム)
*寝酒は睡眠の質を落とし、疲労を増長する。睡眠の数時間前には、断酒を。
●タバコ
タバコは、「百害あって一利なし」らしい。ゆえに即刻やめるべし。と言われがちだが、一気にやめると逆にストレスがたまる。どうしてもやめられない人は、本数を、極力減らすように心がけてはどうだろう。
わたしは、現在はほとんど吸わないが、日本で働いていた20代のころ、結構なスモーカーだった。そんなわたしが個人的にお勧めしたいのが、Nirdosh。ニコチンフリーのハーバル・タバコだ。バジルやターメリック、クローヴ、シナモンなどが配合されたもので、身体に悪くないらしい。しかし、結構な煙を体内に吸収するので、身体にいいとも思えない。思えないが、多分、一般のタバコよりはましだろう。味は好みがあるだろうが、それなりだ。
店頭では販売されていないので、通販での購入となる。フィルター付きの、EXPORT QUALITYがお勧めだ。サイトによって値段が異なるので確認のうえ、ぜひ一度、お試しを。ただし屋内で吸うと、猛烈に煙っぽくなるので、喫煙は外に限る。
●Nirdosh(海外発送)
●Nirdosh(インド国内)このサイトがリーズナブル
https://www.naturalcart.in/brands/nirdosh/nirdosh-herbal-cigarettes-5-packs-1099.html
●カフェイン(コーヒー、お茶、エナジードリンクなど)
コーヒーが好きで、1日に何杯も飲むわたしにとって、これもまた辛い事実だがカフェインの摂取しすぎもまた、よくない。無論、2、3杯くらいまでは大丈夫だとの説もあるので、あまり意識しないほうがいいのかもしれないが、睡眠障害のある人は控えたほうがいいだろう。なお、眠気覚ましなどの効果のあるエナジードリンクは、飲みすぎると心拍数を増加させたり、睡眠障害や頭痛を誘発するケースもあるようだ。何においても、過剰摂取は避けたほうがいいということだろう。
●健全な心身維持のために、バンガロールでもできること
〈なるたけ健康的な食生活を心がける〉
●心が病んでいるときに、インスタントの加工食品ばかりを食べていたのでは、免疫力が落ちてしまい、心身ともにやられてしまう。単身赴任の人には、難しいかもしれないが、なるたけ「身体にいいもの」を意識的に摂ろう。ビールのつまみのような揚げ物や炭水化物ばかりでは、成人病をも誘発する。
●多くの日本人にとって、ソウルフードといえば、「ごはんと味噌汁」だろう。良質の日本米、味噌、しょうゆ。そして天然だし(我が家では「茅乃舎のだし」を愛用)があれば、「元気が出る基本食」ができる。加えて、日本のスーパーフード「梅干し」も常備しておきたい。できれば無添加で昔ながらのシンプルなものが好ましい。胃がもたれた時、嘔吐したとき、体調不良の時など、カップに梅干しを入れ、湯を注いで飲むだけで、身体が浄化される。
●日本料理店も悪くないが、昨今では、コンチネンタル・レストランも増えている。インドではヴェジタリアンのメニューも豊富で、たとえば、「野菜のグリル」などは、シンプルで身体にもよい。サイドディッシュで積極的に野菜をとるといいだろう。中国料理なども、ソースや油脂を控えめにと頼めば、シンプルな味付けで出してくれる。また最近では健康志向の店も増えている。のちのち、同『バンガロール・ガイドブック』では、身体にいい料理を出すレストランの特集を組む予定だが、ともあれ、選択肢は結構あるということをお伝えしておきたい。
●帯同で赴任している妻は、家族を支えるべく「料理」には気を配ろう。日本で仕事をしていた人にとって、急に専業主婦になるのは居心地が悪いかもしれない。しかし、料理は「命を育む行為」であり、「生き延びるために必要なスキル」でもある。本来ならば、男女どちらもが料理ができるに越したことはないだろうが、ともあれ、夫の帯同で来ている以上は、料理は仕事の一つと心得て、家族の健康を支えたいものである。
●食の話が長くなってきたので、ひとまずこの辺で。詳細は「バンガロールでの食生活と健康管理」の項目を参照されたい。
〈高級ホテルなどのスパやアーユルヴェーダグラムでリフレッシュする〉
●バンガロールには、タージグループの「JIVA SPA」をはじめ、シャングリ・ラの「CHI, THE SPA」、リーラ・パレスやリッツカールトンのスパ、「ANGSANA SPA」など、クオリティの高いラグジュリアスなトリートメントが受けられるスパがたくさんある。先進国で受ける同じサーヴィスよりも概ね廉価だ。ホテルのスパは、たいていジャクージーやサウナも併設しており、トリートメントの前後に使うことができる。また、パッケージによっては、プールやジムなどを使えるメニューもある。たとえば、普段の週末、ホテルへ赴き、スパでトリートメントを受け、食事をして、のんびりと過ごすというリフレッシュの仕方もあるだろう。また、ホワイトフィールドにあるアーユルヴェーダのヘルスリゾート「アーユルヴェーダグラム」は、心身ともに浄化できるお勧めの施設だ。わたしたち夫婦はこの十年来、毎年、年末年始の1週間をここで過ごし、デトックスしている。今では不可欠な年中行事だ。(アーユルヴェーダグラムに関心のある方は、日本語の資料をお送りしますので、坂田までお問い合わせを。muse.india@me.com)
〈同好会や県人会、スポーツなどに参加し、気分転換をする〉
●バンガロールには、さまざまな日本人のグループがある。仕事とは関係のない人たちと会い、楽しい時間を共有することは、大きな気分転換になるだろう。バンガロールの日本人コミュニティに関する詳細は、バンガロール日本人会のサイトを参照のこと。もちろん、ミューズ・クリエイションの活動への参加も歓迎だ。ビジネス勉強会や慈善団体訪問など、働くメンバーが主体となっての活動も行っている。
〈坂田が個人的に実践している、ささやかだけれど、役に立つこと〉
子どものころから、過呼吸、心因性頻尿、円形脱毛症と、そこそこメンタルにダメージを受けてきたわたしは、大人になって働き始めても、その苛酷な労働環境と多大なストレスで、軽度ながらも自律神経失調症と診断され、短期間だが薬を処方された経験がある。結婚直後、自分のビジネスを半ば諦め、ニューヨークを離れ、夫の暮らすワシントンD.C.に移転、「ほぼ専業主婦」になったときにも、かなり不安定な精神状態に陥った。結婚によって経済的な不安がなくなったことを素直に喜べず、夫の収入で暮していることに違和感を覚えた。せめて子どもが生まれれば……と願ったものの、結局、実現しないとわかったときには、自分の気持ちをまっすぐに保つのに、かなりのエネルギーを要したものだ。そんなわたしが、自分をストレスから守るべく、実践し、そこそこ効果があると思うことを、参考までに、ここに紹介したい。
●日記をつける:どうしても人に話せないことも、日記になら、書ける。自分の気持ちを整理するにも役立つ。現在は『5年日記』をつけている。日本の書店や文具店には、このタイプの『3年日記』『5年日記』『10年日記』がたくさんあるが、これはお勧めだ。昨年、あるいは一昨年の自分と日々、向き合い、「こんなことでくよくよしてたのか」とか、「相変わらず、わたしはバカなのか?」とか、自分の心模様を反芻することができる。インド駐在を機に、3年、あるいは5年日記をつけてみてはいかがだろう。
●寝る30分前にはコンピュータ、スマートフォンから離れる:これは、なかなか実現できず、結局15分前、とかになってしまうのだが、ともあれ寝る直前には諸々のスイッチを切り、日記を書いたり、本をめくるなどして、脳みそを鎮めるようにしている。
●自分で料理をする:我が家の家事の多くは、メイドに任せているが、料理だけは自分でやっている。黙々と素材を切り、調理をする時間は、ある種、瞑想の時間でもある。気持ちが乱れているときには、おいしいものが作れない。料理には気持ちが現れる。
●エクササイズや呼吸法をする:毎朝、軽いストレッチ。それから時間があるときには、自宅にあるトレッドミルやクロストレーニングを使って軽く数十分、エクササイズをする。時間がないときには、ラジオ体操程度でも、身体を動かす。呼吸法(Pranayama)は、間違いなく心身によい影響を及ぼすが、ついつい怠りがち。日常的に続けたいと思っている習慣ではある。
●寝る直前にシャワーを浴びない。髪を洗わない:これはアーユルヴェーダの教えに従って実践しているのだが、夜のシャワーは軽めに(激しい運動などをしたり、埃っぽい場所へ出かけたりしたときは別)、朝、しっかりとシャワーを浴びて洗髪する。寝る前に髪を洗うと、脳を刺激して熟睡できない。髪が濡れたまま寝るのも、非常によくないとのこと。どうしても夜、洗髪をしたいなら、寝る数時間前に髪を乾かしておくといいようだ。
●昼寝をする:集中力が続かない、疲労感が抜けないときには、昼寝が効果的。できれば午後3時くらいまでに、30分ほど仮眠をとると、そのあと、驚くほど気分がすっきりとする。仕事も捗る。わたしは個人的に「寝るのが好き」なので、普段から7〜8時間の睡眠を心がけているが、たまに6時間程度しか眠れないときなど、できるかぎり、この昼寝でリフレッシュするようにしている。職場ではなかなか難しいかもしれないが、可能であればぜひ。
●猫(ペット)と遊ぶ:猫に全く関心のなかったわたしたち夫婦が、5年前に我が家に住み着いた野良猫NORAを飼うようになってから、ライフスタイルが大きく変わった。現在、4匹の元野良と暮らす日々。アニマルセラピーという言葉があるが、彼らの存在が心を癒してくれると同時に、自分の口から「いい子だね〜」とか「かわいいね〜」とか「大好き〜!」いったポジティヴなことばが、1日に何度も発せられることも、心にいい影響を与えていると思われる。夫と二人の生活では、ほぼ口にすることのなかった言葉につき。しかし、4匹の世話はそれなりに大変。
〈その他のアイデア〉
○眠れない夜、風邪気味のときは、温めた牛乳にターメリックとハチミツを少し入れて飲む。熟睡できる。
○バンガロールでは手軽に入手できるヒマラヤの岩塩。ほんのりピンク色をしたこの塩は、極めて浄化力が高い。さまざまなデトックス効果もある。詳細は割愛するが、わたしは岩塩のランプをベッドルームと書斎においている。点灯すると、得も言われぬ優しい光が辺りを包み、心が落ち着く。同時に空気も浄化されている。関心のある方、お試しを。効能などについては、こちらのサイトに詳細が記されている。科学的な根拠の真偽については定かではない。あくまでも、参考までに。
★こうして書いていくと、心と身体と暮らしの問題は極めて密接に関わっているということを、改めて認識します。心の問題は個々人それぞれの事情によって発生するものであり、極めて繊細なテーマでもあることから、この項を設けるべきかどうか迷いつつも、まとめた次第です。ゆえに、「あくまでも参考として」読んでいただければ幸いです。なお、バンガロールに在住されている方で、「自分はこういう状況を、こうやって切り抜けた」という体験談などがあれば、どうぞお知らせください。今後、別項目で行っているQ&Aも、メンタルヘルスケアをテーマに試みたいと思います。
メンタルヘルスケア
ストレスを抱え込まないために
心の不調は、どこに住む、誰にでも、起こり得ることです。とはいえ、母国を離れ、異郷の地で暮し働く人には、母国でのそれよりも遥かに、深刻な状態になることもあります。ここでは、異国に暮らす日本人が陥りやすいストレスの例を挙げながら、どのように対処すればいいのかについて、専門家による提言や、メンタルヘルスに関する書籍や情報サイトの言葉を引用しつつ、まとめています。今後、バンガロール在住の日本人のみなさんから、体験談などを募って紹介する予定です。どうぞ参考になさってください。
★この項では、あくまでも、バンガロール生活になじめない人たちを想定して、事例を挙げつつ、対策をご紹介しています。バンガロールはインドの中でも極めて暮らしやすい環境にあり、他の先進諸国とは異なる利点や楽しさも多々あります。最初は戸惑いつつも、この地でのびのびと楽しく暮している方も、たくさんいらっしゃるということを、あらかじめ記しておきます。
CONTENTS
●海外赴任者とその家族が見舞われるストレスの例
●海外赴任者が直面するトラブルの、根源的な要因
●海外赴任者がかかりやすい心の病気
●心が疲れている兆候が感じられたときには……
●ストレスをためないために。ストレス・コーピング
●健全な心身維持のために、バンガロールでもできること