BANGALORE GUIDEBOOK バンガロール・ガイドブック

わたし(坂田)は、1999年から2年に亘り、ニューヨークでフリーペーパーを出版していました。ビジネスの傍ら、それは自己実現のような媒体でした。即ち予算がないことから、自分で取材、編集、デザイン、執筆、印刷手配など一人で行っていました。たいへんな作業でしたが、同時に有意義でした。


2001年、インド人男性とニューデリーで結婚。ワシントンDCで働く夫との住まいと「二都市生活」を継続するなか、趣味の領域で発行を続けるには負担が大きくなったことから、ウェブマガジンに以降すべく廃刊を決めました。


紙媒体としての最終号のテーマは「異国で子どもを育てるということ」。ニューヨーク在住時、わたしは日本人駐在員社会とはほとんど交流がありませんでした。しかし、帰国子女問題については、当時から強い関心を持っていました。同号の取材を行っていた時期の9月11日。世界同時多発テロが、わたしの住んでいるニューヨーク、そして夫が暮らすワシントンDCを襲いました。それは筆舌に尽くしがたい、衝撃的な出来事でした。自分の中の優先順位がバラバラと崩れ落ち、結果、わたしはニューヨークを離れ、夫と一緒に暮らすことを決意しました。その延長線上に、インドに暮らす現在のわたしがいます。


この号を開くと、当時のニューヨークの、締め付けられるような重い空気と切迫感、焦燥感が蘇ります。それと同時に、生きているものは、未来に向けて、まっすぐに生きねばならない、次代を担う子どもに対し、大人は道標を示す手助けをせねばならないとの思いもまた、蘇ります。


歳月は流れ、暮らす場所は変われども、異国に暮らす子どもたち、親たちが抱える課題は、当時も今も、あまり変わらないように思います。この号を編集するに際し、取材をさせていただいた方々の言葉は、今でも、誰かの心に、何らかの示唆を与えてくれるものと確信します。ここに、紙面をシェアします。目を通していただければ幸いです。


※高解像度のデータをご希望の方にはpdfファイルをお送りしますので、お問い合わせください。muse.india@me.com(坂田)

『muse new york』2001年秋号 Published by Muse Publishing, Inc.

今も変わらぬ、課題と解決の糸口

異国で子どもを育てるということ