〜インド 食生活の概要〜

西日本新聞『 激変するインド 』(坂田マルハン美穂)

2007年4月掲載記事を、加筆修正して転載。


タンドーリと呼ばれる大釜で焼かれた鶏肉やナン、ギー(精製バター)や生クリームなどの油脂分がたっぷり入った肉や野菜のカレーといった料理が、インドを訪れる前のわたしの、インド料理に対する印象だった。


2001年。結婚式のために初めてインドを訪れ、ニューデリーにある夫の実家で出された料理を口にして、目からうろこが落ちた。


柔らかな豆の煮込み(ダル)、ホウレンソウと自家製チーズのカレー(パラック・パニール)、マトンカレー、オクラのソテーなど、いずれも芳醇なスパイスの風味がするにも関わらず、辛さや脂っこさがなく、やさしい味わいの料理ばかり。


全粒小麦粉で作られたチャパティと呼ばれるクレープ状のパンも、素朴な風味だ。


結婚式に出席するため福岡から訪れていた家族も、タンドーリチキンやマトンのケバブなど、出される料理のおいしさに旺盛な食欲を発揮。


「カレー」とひと言で呼ぶには、あまりにも多彩なメニューに感嘆した。


日本の約9倍の国土に12億人以上が暮らすインド。主要言語だけでも18を超え、ヒンドゥー教、イスラム教、キリスト教、スィク教 と、宗教も多彩。


北はヒマラヤ山麓の寒冷地から南は常夏の熱帯まで、地理的条件も多様性に富むこの国では、食事情も、地域や宗教、階層によって異なる。

 

日本人にもなじみのあるタンドーリ・チキンやナンは、主に北インドの料理。沿岸地域では魚料理が、米の産地である南部では、バナナの葉を皿にココナツオイルを多用した野菜料理が中心だ。


広汎にわたって用いられているスパイスに、ターメリック、クミン、コリアンダーという三大スパイスがある。このほか、各家庭で複数のスパイスをブレンドし、独自のガラム・マサラ(調合スパイス)を作り、調理に用いる。


スパイスの多くは身体によい効能を持つため、インドの家庭料理には薬膳のような効果もある。


そんなインドの食生活にも、近年、変化が見られはじめている。


インド料理は、そもそも「作ったその日のうちに食す」ことが基本。冷凍・冷蔵保存はせず、作り立てを食することが身体にもよいとされてきた。


「カレーは翌日がおいしい」


というのは、あくまでも日本のカレーの話。スパイスの香りがまろやかになることが、即ち美味とされるのであろう。


しかしインドでも、最近では核家族が増えたこともあり、簡単に調理ができる料理別の調合スパイスや、レトルト食品などの需要が増え始めた。ここ数年のうちにも、スーパーマーケットの加工食品売り場は徐々に拡大している。


かつてのインドでは、外食といえば、インド各地料理、中国料理、限られたコンチネンタル料理程度であったが、最近ではイタリア料理やアジア各国の料理が盛んに見られるようになった。


特にイタリア料理の人気は高く、スーパーマーケットにもパスタ、トマトソース、オリーヴオイルなどが並ぶ。


また都市部では、マクドナルドやKFC、ピザハットなどのファストフード店も続々と誕生。牛を神聖な動物と崇めるヒンドゥー教徒が多いインドのマクドナルドでは、牛肉の代わりに鶏肉やマトン肉を使ったハンバーガーが出される。菜食者も多いことから、鶏肉が売り物であるはずのKFCでさえ、菜食者向けメニューを準備している。


一方で、肥満や糖尿病といった成人病も深刻化。コレステロールを下げる効果をうたったチャパティ用小麦粉や、低カロリーのアイスクリームなども登場し始めている。


食生活の多様化もまた、劇的に進行している最中だ。

バナナの葉を皿にするのは、南インドの伝統的な食べ方。ヴェジタリアンが主流で米が主食。締めくくりは、白米にカード(ヨーグルト)をかけた「カードライス」。

タンドーリ料理は、タンドールという釜に串刺し肉を入れて焼く。ナンは釜の壁面にくっつけて。左写真はニューデリーにある北インド料理の名店、BUKHARA。

グジャラート地方の定食である「グジャラティ・ターリー」。ムンバイでは専門店が数多く見られる。ヴェジタリアンながらも豊富な料理に満足感たっぷり。辛みと甘みが強め。給仕がテーブルを巡回し、次々についでくれる。

沿岸部では魚介類も豊富。下の写真はゴアのビーチ沿いのレストラン。ポルトガルの影響を受けた料理も多い。

コルカタは淡水魚料理が多い。マスタードを多用したカレーも有名。上の写真は親戚宅で出された手料理。マスタードの粒を石臼ですりつぶしたものを使った魚のカレーで、美味だった。

Indian Food

地方ごとに特色のある、豊かな食生活

Ente Keralam @ Bangalore, Karnataka, India