01:バンガロールの変遷 なぜゴミ溢れる町になってしまったのか?


●造り上げられたガーデンシティ

●ガーデンシティからガベージシティへ

●ゴミ溢れるガベージシティになった理由



02:バンガロールのゴミ処理における現状


●バンガロールのゴミ事情と実態

●ゴミを巡るツアーに参加して、問題を目の当たりに

●ゴミの内訳……80%が再生可能



03:ゴミ問題に対する行政の動き


●脱ゴミ国家、脱ゴミ都市に向けて……

●2016年、遂にBBMPが本気を出してきた

●自然に還る「昔ながら……」でゴミ減量対策



04:目に見えないだけ。日本はゴミ王国でもあることの自覚を


●我々日本人も、ゴミを出して生きている

●日本はゴミ焼却施設世界最多! 大量のゴミを出している



05:インドに暮らすわたしたちが、具体的にすべきこと


●ゴミの分別を徹底する

●公営リサイクルセンターを利用

●私営リサイクルショップを利用

●オンラインでゴミの回収を依頼。新システムも

●生ゴミは庭やバルコニーで堆肥に

●「ゴミを減らす暮らし」を実践。サステナブルな暮らし

●賞味期限切れ食品を貯め込まない。日本製の危険ゴミは日本へ持ち帰る。

●利用可能な不用品は慈善団体へ寄付

●街の美化活動に参加してみる

この動画は、2016年6月12日に開催された、バンガロール日本人会総会でのミューズ・エキスパッツによるプレゼンテーションを再現したもの。当日は、メンバーが交替で読み上げた。

●造り上げられたガーデンシティ


まず、ゴミの話題に入る前に、バンガロールの成り立ちについて説明します。現在では「ガベージシティ」との汚名を持つバンガロールですが、かつてはインドで最も住みやすいガーデンシティ、エアコンシティと呼ばれていました。


しかし、そもそもバンガロールは、緑豊かな土地ではなく、乾いた高原地帯でした。ゆえに、バンガロールの創始者であるケンペ・ゴウダ1世は、都市形成の際、土地を潤すため、多くの人工湖を作りました。この湖の大半は、インド独立以降の近年、蚊が多発するなどの理由で埋め立てられました。その際、湖にゴミが投棄されたそうです。


1700年代にマイソール王国の藩主、ティプー・スルタンが、町の緑化に貢献しました。バンガロールにある樹木の多くは、海外から輸入された外来種です。以降、1800年代の英国統治時代には、駐屯地として形成され 、暮らしやすい町となりました。そんなバンガロールに変化が見られ始めたのは、今から20年ほど前です。



●ガーデンシティからガベージシティへ


1991年のインド経済自由化に伴い、外国資本が流入しはじめました。2000年を過ぎたころから、バンガロールはインドのシリコンヴァレーとして、世界の注目を集めはじめ、欧米企業が次々に進出しています。都市化に伴い、人口は急増。2001年の国勢調査時には、500万人を切っていた人口が、現在1000万人を超えています。わずか15年の間に人口が倍増したというわけです。


【人口の急増】

2001年の国勢調査約4,592,000人

2011年の国勢調査約8,474,000人

2016年現在約11,560,000人



●ゴミ溢れるガベージシティになった理由


なぜゴミが溢れる町になってしまったのか。以下のような理由が考えられます。

◎人口が急増する一方、インフラストラクチャーが旧態依然である。

◎欧米文化の流入によるライフスタイルの変化により、従来は自然に還る生ゴミが中心だったのが、自然に還らないゴミが急増。

◎ゴミ処理に対する知識や関心がない市民が多い。

◎カースト制度に起因するゴミ処理に対する忌避の感情。


01:バンガロールの変遷 なぜゴミ溢れる町になってしまったのか?


現ラルバーグ植物園にあるケンペ・ゴウダ司令塔あと

●バンガロールのゴミ事情と実態


ゴミの収集は、バンガロールの行政機関であるBBMPが実施しています。しかし、日々回収できているゴミは65%程度(2011年)。収集されないゴミは、空き地や路肩など、あらゆる空間に投棄されています。従来は自然に還る生ゴミが中心だったのでごまかせていたのでしょうが、そうでない現在、事態は深刻です。不衛生なのはもちろん、プラスチック袋が排水口を塞いで雨季の道路を水没させたり、ゴミを食べる牛を死に至らせたりします。


なお、インドにはゴミ焼却施設がありません。バンガロールでは、日々5000トンほどものゴミの大半が、そのままゴミ投棄場に捨てられています。2012年には、BBMPによってゴミの分別が発令されましたが、徹底せず、バンガロール郊外4カ所にあるゴミ投棄場には、 あらゆるゴミが渾然一体となって捨てられている状況です。



●ゴミを巡るツアーに参加して、問題を目の当たりに


わたし(坂田マルハン美穂)は、2011年に、デイリー・ダンプ (Daily Dump) という団体が主催する「ゴミを巡るツアー」に参加しました。丸一日かけて、ゴミ捨て場、郊外の投棄場、リサイクル場などを訪れました。


写真の投棄場は、現在、ゴミで満杯になったため、ツアーも休止されています。このときは、マスクの上から手ぬぐいを巻いても、鋭い悪臭が鼻を突き、身の危険を感じるほどでした。


当日のツアーの様子は、ブログに克明にレポートしていますので、ぜひこちらをご覧ください。すでに古くなった情報も多々ありますが、これに目を通せば、ゴミ問題を人ごととは思えなくなるはずです。


■インドのゴミ処理を巡る旅。ぜひ読んでください。(←Click!)

■DAILY DUMP (←Click!)



●ゴミの内訳……80%が再生可能!


デイリー・ダンプの資料によると、バンガロールにおけるゴミの8割が再生可能だそうです。まず、残飯や野菜くずなど、堆肥になる生ゴミが60%。次いで、プラスチック・バッグ、ボトル、空き缶、新聞などのリサイクル可能なゴミが20%、その他、電化製品、薬品、洗剤などの有毒ゴミが10%、廃棄場に埋めるしかない動物の死骸やおむつ、タバコの吸い殻などが10%という構成です。


我々が生ゴミを自宅でコンポスト化し、リサイクルゴミを然るべき場所に持って行けば、8割ものゴミを減らせるということです。


02:バンガロールのゴミ処理における現状


2011年撮影の、バンガロール郊外のゴミ投棄場。現在は満杯になっているとのこと

街角の様子。ゴミ置き場とそうでないところの違いがわからない。プラスチックを誤って食べて命を落とす牛もいる

生ゴミ、紙類、プラスチック類が渾然一体……。どす黒い汚水が流れ出している

ゴミを回収するBBMPの収集人

ゴミの8割が再生可能!

●我々日本人も、ゴミを出して生きている


我々日本人も、ゴミを出して生きています。これは今年1月の新聞記事です。市内サンキーロードに投棄されていた日本酒の酒樽を見つけた市民が、危険物だと判断し、警察に通報。警官や警察犬が出動し、当日は祝日だったにも関わらず周辺が閉鎖される騒ぎとなりました。


日本人にとっては違和感のないものでも、インド人にとっては得体の知れないものにしか見えないのは、仕方ありません。ゴミを捨てるにも注意が必要です。



●日本はゴミ焼却施設世界最多! 大量のゴミを出している


インドにゴミ焼却施設がないと知ると、多くの日本人は驚きます。わたし自身もそうでした。なぜならゴミは分別して燃やすのが常識だ、と思っていたからです。しかし、それはあくまでも日本の常識でした。たとえば米国やカナダなど、国土の広い国では、ゴミは「埋め立てる」のが一般的です。


日本のゴミ焼却場の数はダントツで世界一、一人当たりのゴミ排出量、ダイオキシンの排出量も膨大です。加えて、核廃棄物や放射能汚染ゴミなど、目には見えない非常に危険なゴミも増え続けています。分別して、リサイクルして、焼却すればよい、という話ではありません。


「目に見える」インドのゴミ問題も深刻ですが、「目に見えない」日本のゴミ問題についても、実態を調べるなどして、理解しておくことは大切だと思われます。


04:燃やせばいいのか? 日本はゴミ王国でもあることの自覚を


2016年1月16日 

The Times of India


タイムズ・オブ・インディア紙 


バンガロール市内サンキーロードに投棄されていた日本の酒樽を見た市民が、危険物があると通報。警察や警察犬が出動し、一時周辺は閉鎖された。鑑識課に回された結果、日本酒だと判明。

●脱ゴミ国家、脱ゴミ都市に向けて……


インドでは、これまで、後手に回ってきたゴミ処理問題ですが、2014年にモディ首相が就任してからは、彼の主導でクリーン・インディアキャンペーンが張られたり、スマートシティ・ミッションの一環として、美化が掲げられるなど、ゴミ問題への取り組みが本格化しはじめました。



●2016年、遂にBBMPが本気を出してきた


バンガロールでは、BBMPが本気を出してきました。2016年3月14日から、スーパーマーケットや飲食店ほか、あらゆる店舗において、プラスチック・バッグやパッケージの使用が禁止されはじめました。テイクアウトやデリヴァリー用のプラスチック容器やストローまでも禁止されるケースもみられることから、あまりにも急な改革に、業界からは不満の声もあがっています。一過性の措置に終わり、徹底しない可能性もありますが、せめて市民の意識が徐々に改善され、なるたけゴミを出さない傾向になることを期待したいものです。



●自然に還る「昔ながら……」でゴミ減量対策


買い物の際、バッグを持っていない人は、店頭で有料のバッグを購入することになります。強硬手段だという印象を受けますが、こうでもしなければ、立ち居かないというところまで追い込まれているのが現状でしょう。


インドの行政や、生活環境に対して、不満を言うのは簡単ですが、それでは何の解決にもなりません。我々もここで生活をする以上は、ゴミ問題に目を向け、状況の改善に協力するべきだと考えます。


インドには、つい20年ほど前までは、プラスチックやビニル袋に頼らない、昔ながらのエコロジカルなライフスタイルが一般的でした。そのころの習慣に再び戻ることが、理想的だといえます。


たとえば……

・チャイ用のカップをプラスチックから素焼きのカップに。

・お皿はバナナリーフや乾燥させた椰子の葉で作られたものを利用。

・新聞紙を利用して紙袋を作り、商品袋に。


03:ゴミ問題に対する行政の動き


バンガロール市内の日本料理店「播磨」のお弁当箱は、以前のプラスチック製から、要返却の重箱に。むしろ見栄えがよくなっている

クリーン・インディア・キャンペーンの一環で、自ら箒を持ち清掃をするモディ首相

ショッピング・バッグを持っていない客には、店が専用の袋を販売。写真は市内のトムズ・ベーカリー

①ゴミの分別を徹底する


まず、ゴミの分別を徹底する。この分別は、BBMPによって指導されているもので、自治会によって徹底しているところとそうでないところがあります。徹底していない居住エリアにお住まいの方は、積極的にリサイクルショップなどを利用するといいでしょう。


05:インドに暮らすわたしたちが、具体的にすべきこと


②公営リサイクルセンターを利用(BBMP管轄のドライウエイスト収集センター)


バンガロール市内には、 BBMP管轄のドライウエイスト収集センターが地区ごとに一カ所、計189カ所もあります。ここでは新聞や段ボール、プラスチック類、キングフィッシャーのビール瓶などを買い取ってくれます。

③私営リサイクルショップを利用


BBMP管轄以外にも、市内には私営のリサイクルショップがたくさんあります。大半の店が、新聞、段ボール、プラスチック類を引き取ります。ご近所のショップを開拓して、利用されるといいでしょう。 我が家では、ドライヴァーに持って行ってもらい、受け取ったお金はドライヴァーにチップとして渡しています。

【引き取り価格の一例】(キロ)


◎新聞紙:10ルピー 

◎段ボール:7ルピー 

◎プラスチックバッグ:10ルピー

◎ペットボトルなど:10ルピー

◎ボトル1本1ルピー

(キングフィッシャー緑のみ)


ゴミの引き取り価格は、BBMPのセンターを含め、どこもほぼ同じ

④生ゴミは庭やバルコニーで堆肥に


生ゴミについては、庭やバルコニーがある方は、自宅で堆肥を作ることをお勧めします。先ほどゴミ処理ツアーのところで触れたデイリー・ダンプの素焼きコンポストがお勧めです。我が家では生ゴミは100%自宅で堆肥にしています。大量の生ゴミが、ポットの中で変容し、少量の質の高い堆肥に生まれ変わります。堆肥は、庭の花や植物を育てるのに使います。


また空き缶やボトル、プラスチック・バッグなども洗って保存、古新聞と共に、月に一度、リサイクルショップへ持ち込んでいることから、我が家では外に出すゴミが非常に少ないです。

⑤「ゴミを減らす暮らし」を実践。サステナブルな暮らし


ゴミ処理施設が完備された先進国からきた我々は、「分別すればいい」という考えに陥りがちですが、ゴミ焼却ひとつをとっても、地球上のエネルギーを浪費しています。ゴミの分別を徹底するのはもちろんですが、「ゴミを減らす暮らし」を意識することが大切だと思われます。


住んでいる国を問わず、なるたけ環境に負担のかからないものを使用し、サステナブルなライフスタイルを意識したいものです。エコバッグを携行するのも、簡単にできることの一つです。

⑥賞味期限切れ食品を貯め込まない。日本製の危険ゴミは日本へ持ち帰る。


立つ鳥あとを濁さず。駐在員を始めとする我々外国人居住者は、帰任時に、大量のゴミを捨てて帰らないようにしたいものです。たとえば日頃から、賞味期限切れの食品などを貯め込まないというのもポイントでしょう。破棄する場合は、開封し分別してください。また日本語を読めない使用人に日本の加工食品を託すのも、望まれない限り避けるべきでしょう。洗剤や殺虫剤、薬品などの「危険ゴミ」は、 帰任の際、そのまま日本へ送り返しましょう。先ほどの酒樽の例もそうですが、日本語しか書かれていない商品は、内容物を確認することもできませんから、正しく処分されません。

⑦利用可能な不用品は慈善団体へ寄付


コンディションのよい不用品は、慈善団体へ寄付することをお勧めします。衣類や玩具などは、洗濯されているものや、不具合を補整されたものを託すのがマナーです。寄付先については、お問い合わせをいただければ、適切な団体をお知らせいたします。muse.india@me.com (坂田)

⑧街の美化活動に参加してみる


そして最後に。インドでは数年前より、過去の因習に囚われない若い世代を中心に、街の美化運動が始まっています。たとえば、ここバンガロール拠点のアグリー・インディアンというグループは、街角にゴミが捨てられにくくなるよう、壁や橋脚に色を塗ったり、絵を描いたりして、明るく清潔な環境を育んでいます。


サイトに登録しておけば、最寄りエリアでの活動日直前にメールが送られ、現地集合で作業をします。知らない者同士が、黙々と作業をし、街をきれいにしていく経験は、清々しい達成感を与えてくれます。我々日本人も、 できるところから、動きだしましょう。

2009年にバンガロール在住のインド人女性によって創設。コンポスト製品などの販売をはじめ、ゴミのリサイクル、処理に関するサーヴィス、啓蒙活動などを行っている。インディラナガールに店舗がある。

2010年に、自称「Ugly Indian」が活動開始。市民有志と美化活動を実施。最近では、BBMPと協調しての、橋脚ペイントなどの活動も積極的に行っている。

BANGALORE GUIDEBOOK バンガロール・ガイドブック

ガーデンシティ再び

バンガロールのゴミ問題と向き合う


ミューズ・クリエイションのチーム・エキスパッツ(インドで就労しているメンバー)は、2016年6月に開催されたバンガロール日本人会総会において、当地におけるゴミ問題に関してのプレゼンテーションを行いました。


深刻な社会問題となっているバンガロールのゴミ事情を概観、在住日本人ができることなどを提案。 ここでは、プレゼンテーションで使用したものと同じ資料を音声付きでアップロードするとともに、関連資料を掲載しています。


バンガロール在住の方にはぜひ、ゴミの仕分けやリサイクル、コンポストの具体的な情報に目を通していただき、日常生活におけるゴミの取り扱いに際し、役立てていただければと思います。